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ー 「東洋人の娘なんてふざけるな」
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ー ほかの人との妊娠を受け入れてくれたトニー

 

 在日三世として東京に生まれ、人気シンガー、クリスタル・ケイ(37)を女手ひとつで育てたシンシア(60)。22歳のとき海軍のフィルと婚約し、横浜のアパートで新生活を始めた。そんななか、妊娠が判明し─。

「東洋人の娘なんてふざけるな」

「家中を探して発見したノートをパラパラめくっていたら、何枚目かに電話番号が走り書きで記してあるのを見つけました。トニーが以前それを見ながら実家に電話をかけていた記憶があります。これでトニーと連絡が取れるかもしれない……。

 電話に出たのは、トニーのお母さんでした。身元を明かし、『トニーの連絡先を教えて』とお願いしました。けれどお母さんの態度は冷たく、

あなたのことは聞いてる。何の用? トニーがどこにいるかなんて知らない』と言い放ちます。トニーの地元はアメリカ・ミシシッピ州の田舎町で、黒人同士のコミュニティーが強く息づいている土地でした。

 かつてトニーが、『結婚したい子がいるんだ』と私のことを話したら、お母さんに、『東洋人の娘なんてふざけるな』と言われたと聞いています。

 それでも『お願いです、教えてください、お願いします』と何度も何度も頼みました。すると、かわいそうになったのでしょう、ついにお母さんが折れました。

『明日同じ時間に電話をしなさい』と言われました。翌日かけ直すと、『トニーのナンバーだ』と言って彼の電話番号を教えてくれました」