片づけ“ビフォー・アフター”を再開した理由

身ぶり手ぶりを交えながら、キラキラした笑顔で自身の過去を話す近藤さん。面白おかしく、ときにはシリアスに話を続ける彼女の、人を魅了する話術は相手の心を引き込む
身ぶり手ぶりを交えながら、キラキラした笑顔で自身の過去を話す近藤さん。面白おかしく、ときにはシリアスに話を続ける彼女の、人を魅了する話術は相手の心を引き込む
【写真】人気者だったという小学校2年生のころの近藤さんが可愛すぎる!

 近藤さんは今、自身が培った経験と知識を伝授することに力を注いでいる。建築士や住宅営業など住宅のプロ向けの『住まい方アドバイザー養成講座』を毎年開講。加えて、前述のように企業とのコラボや商品開発などの仕事が増え、個人宅の片づけからはしばらく遠ざかっていた。だが最近、心境の変化があったという。

「ひょんなことから、2軒のお宅に片づけを頼まれたのです。私が片づけに携わるのは15年ぶり。1軒は、ご主人がご病気で、すっきりした部屋で残りの人生を過ごさせたい、と。もう1軒は、親と夫を看取った一人暮らしの女性で、自分が元気なうちに身の回りを整理し、残りの人生を前向きに過ごしたいと。気持ちが理解できる依頼です」

 近藤マジックで、すっきり片づいたわが家に、依頼者は最高の笑顔で喜んだという。

「片づいた心地いい空間を手に入れると、人は気持ちがどんどん前向きになっていくんですね。顔つきまで変わります。それを久しぶりに目の当たりにして、私のちょっとしたアドバイスで、こんなに元気になってもらえるのなら、もっと片づけの仕事をやっていきたいと思ったんです」

 原点回帰。かつて近藤さんの収納術に飛びついた世代もいまや中高年。終活の一環として物を減らしてすっきりさせたいという要望は多い。

「もう還暦を過ぎているのよ!」と言いながらも、身体から発するバイタリティーは衰えを知らない。その目はまだまだ未来を見据える
「もう還暦を過ぎているのよ!」と言いながらも、身体から発するバイタリティーは衰えを知らない。その目はまだまだ未来を見据える

「終わりに向かう“終活”という言葉は私は好きじゃないんです。みなさん、家の中を見回して途方に暮れるのではなく、快適な空間で残りの人生を前向きに過ごしてもらいたいのです」

 ただ、近藤さん自ら個人宅の片づけをするのは数が限られる。まして、住む人に寄り添い、暮らしへの思いを引き出して十人十色の解決策を提示する近藤流の片づけ収納は彼女のほかに、これをできる人が少ない。

「なので、今考えているのは、一般の人向けに、自分で片づけられるようになる講座を開くこと。まずは小さなスペースから、何をどうすればよいか、そのノウハウをお伝えして。片づけの力をつければ、人生の最後まで自信を持って日々の暮らしを収めていくことができる!と思うのです。もうひとつは、私と同じように片づけができる“片づけのプロ”を養成する講座。この2つ準備にとりかかってます」

 仕事の話になると、がぜん熱がこもる。プライベートで今後やりたいことはありますか?と問うと、「ないんですよ」と即答した。

「仕事が子どもみたいなもんですし。こうして今後の計画を考えているとワクワクします。そもそも私の仕事は日常の暮らしに関わること。こうしたらもっとラクに生活できるのに、もっと家が心地よくなるのに、ということを、みんなに伝えたい、しゃべりたい(笑)。だから仕事だと思っていないんです」

 親友の服部さんは、「仕事が趣味、それがのりちゃんと私の共通点」だと言う。

「といって、決してのりちゃんは無趣味な人ではないですよ。おしゃれも好きだし、服もよく買ってた。おいしいものを食べに行くのも大好きだしね。最近の口グセは“やせなあかん”(笑)」

 旅行も共通の趣味。2人で熊本に行ったときのエピソードを服部さんはこう話す。

「空港で、出発まで時間があったから2人でのんびりお茶してたの。そしたら、アナウンスで名前を呼ばれて。出発の時間が迫っていたんです。しかも搭乗口が遠い! 大変だ、急がなきゃって荷物持って走ったら、のりちゃんがブワーッて猛スピードで走って、はるか前方にいたんです。昔、陸上選手だったとは聞いてたけど、最近ののりちゃんはデスクワークが多いから私のほうが体力あると思っていたの。いやいや、速い、速い……驚いた」

 韋駄天、健在なり! 目的に向かうパワーは、いまだ衰えを知らない。

<取材・文/村瀬素子>

むらせ・もとこ 映画会社、編集プロダクションを経て'95年よりフリーランスライターとして活動。女性誌を中心に、芸能人、アスリート、文化人などの人物インタビューのほか、映画、経済、健康などの分野で取材・執筆。