目次
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ー 莫大な借金あっても愛ある温かい食卓を ー 極貧生活を支えた“0円レシピ”
Page 2
ー 極限状態の食材はまさかの「猫缶」
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ー 80歳になっても2人で仕事したい ー 菜~んと!ゴマった!捨てるとこで炊いたん
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ー 『じゃがりコロッケ』 ー 『もやしのせいろ蒸し』

 

「あのころは、一日3食食べるのは夢のまた夢。アメちゃん舐めて空腹をごまかして、50円玉1個握りしめて、スーパーのもやし売り場に直行なんて日もしょっちゅうでした(笑)」

 と、壮絶な同棲時代を笑いながら振り返ってくれたのは、「ボヨヨ~ン」のギャグで知られる夫婦漫才コンビ「かつみ・さゆり」のさゆりさん(53)。いつも明るく、ラブラブな姿が微笑ましい2人だが、夫のかつみさん(60)は、結婚前から株取引で大損し、1億7000万円もの借金を抱える“借金王”。さゆりさんは当時20歳で、そんな彼との同棲生活のスタートは想定外のものだったという。

「まだコンビを組む前だったのですが、昼は芸人の仕事、夜はバイトで忙しかったかつみさんに代わって、私が銀行に行ったり、毎日たくさんかかってくる督促電話を受けたり。そうしてるうちに家に帰れなくなってしまい、気づいたときには一緒に暮らしてました」(さゆりさん、以下同)

莫大な借金あっても愛ある温かい食卓を

 毎月の給料日は決戦の日。銀行が開いた瞬間に駆け込み、口座から現金をおろさないと、すぐに各所から引き落とされ、手元に残らなくなってしまうためだ。食費に使える額はわずかだったが、さゆりさんはめげなかった。

「かつみさんは、子どものころからお母様が忙しく働いていたから、家族で楽しく食べるごはんを知らないで育った人やった。だから、愛情たっぷりの温かい食卓を知ってほしくて。貧しくても少しでも明るい気持ちになれるごはんを作りたかったんです」

極貧生活を支えた“0円レシピ”

 思わぬ形で始まった、過酷な同棲、そして新婚生活。彼を支えたいという思いはあったものの、当時のさゆりさんに、料理の知識があったわけではなかった。今とは違いネットでレシピ検索はできないし、料理本を買うお金もない。頼りにしたのは、明治生まれの曽祖母、大正生まれの祖母、昭和生まれの母の存在だった。

「私は3世代の女性に囲まれて育ったんです。実家にいたときには、よく料理などのお手伝いをしてました。そのときのことを思い出して、最初は見よう見まねでやってみたんです」

 特に印象に残っていたのが、祖母が作った山菜料理。材料となる山菜は、家族総出で山に採りに行っていたという。

「私はその中でも、イタドリのおひたしが大好きで、食卓に出るといつも大喜びしてましたね」

 こういった経験が、“0円レシピ”のヒントとなっている。

 0円レシピの材料は、ファンから差し入れされたスナック菓子『じゃがりこ』や、スーパーの店員さんからもらった大根の切れ端など。そのほか、もやしなど、できるだけ少ないお金で手に入れた食材を、とことんムダなく使うのがコツ。お金をかけなくても、調理次第で、すごくおいしいおかずになる。

「とにかくカサ増しが大事やったんで。全然、捨てるという発想がないんです。

 大根だって、皮も、葉も、しぼり汁一滴だってムダにしません。むしろ、そういうところにこそ栄養が含まれてるし、案外おいしかったりも。大根って、捨てられてしまう葉っぱがついた付け根の部分がいちばんおいしいんですよ。

 まあ、私の場合、必要に迫られてやってたことなんですけど、言うてみれば、これってSDGsですよね。やっと時代が私に追いついてくれはった(笑)」