極限状態の食材はまさかの「猫缶」

「そうは言うても、もちろんしんどい時期もありましたよ」

 20歳のころ、作った料理のほとんどは働きに出るかつみさんに食べさせていたさゆりさん。なんと救急車で運ばれ、栄養失調と診断されたことも。それでも迷惑をかけたくないと、親や仕事の仲間にも相談できない日々が続いていた。しかも、相変わらず、お金はない。そんなとき、思いもかけない救世主(?)が現れた。

「出演した番組でキャットフード1年分をいただいたんです! 本当に食材が何もなくなって困っていたので、すっごく助かりました」

 まさかの食材キャットフード! 一体どんな料理になったのだろうか?

「猫用のマグロ缶と人間用のツナ缶の違いって、要するに塩分なんです。猫用のほうが塩けが足りないので、マヨネーズとお塩を足してツナ風にして、それをツナサンドにして食卓に出しました。かつみさんは、何の疑いも持たずに全部食べてくれました♪

 皆さんにはまねしてみてね、なんて言えませんけど……。かつみさんは私のどんな料理でもおいしく食べてくれて、かつ、おなかを壊したりもしないので(笑)、失敗を恐れずにお料理できます!」

 過酷な状況でも手を取り合い、明るく前向きに乗り越えてきた2人。しかし、30年以上を共に過ごす中で、大きな仲たがいなどはなかったのだろうか?

「億単位の借金って、実際、本当にしんどいです。でも私は、借金が原因でケンカをするのは借金に負けることと同じだと思って、絶対に嫌でした。

 だからいつもできるだけポジティブに、どれだけ貧相な食卓でも料理にわざと派手な名前をつけて、華やかに楽しくしようとしたり。かつみさんもそれに応えて一緒に楽しくやってくれたから、ここまでこれたんやと思います」

 レシピ本の中に並ぶ「昨日、すき焼きだったので♪」「疑惑のうな疑丼」「アルマゲドンならぬ揚げ混ぜ丼」などのコミカルなネーミングには、そんな思いが込められている。