問題は、
・社長をはじめとする採用責任者
・新入社員をあずかる現場
・新入社員
それぞれに「認識のズレ」があったことだ。
社長や採用の責任者は、本来の目的を見失い、「働きがい」という表現を優秀な新入社員を集めるためのエサのように使っていた。
いっぽう、現場で働く人たちは「働きがい」についてあまり関心がない。それよりもまず、やるべきことをやることが重要で、期待された成果を出すことに重きを置いている。
これは前述した通り、イチゴの美味しいショートケーキの例えに通じる。広告でイチゴの美味しいショートケーキをアピールしておきながら、現場で働く人たちはそのイチゴがそれほど美味しいという認識を持っていないのだ。この場合、お客様の期待とズレが生じる。
近年、働きがいや心理的安全性、エンゲージメント、ワークライフバランス、クオリティーオブライフといった新語がよく報道で使われる。
しかしこれらのワードに関心が高いのは、就職や転職活動を行っている人たち、そして経営者や役員に限られる。いっぽう現場の人たちは、意識している余裕がない。
劇的な環境変化に伴い、成果の出し方が変わっている。デジタル対応やリスキリングなど、身につけるべき知識やスキルが多すぎて、部下育成している場合ではない。
そんな状況で、
「入社したら、まるで働きがいを感じられないんですが」
と新入社員に指摘されても、どうしたらいいかわからない。これが新入社員を受け入れる先輩たちの本音だろう。
ポイントは「Must」「Can」「Will」
それでは、どうしたらいいのか。
私は15年以上も前から、新入社員研修で一貫して言い続けているフレーズがある。それが、
である。この順番が大事だ。
やるべきこと(マスト)をやり続けることで、やれること(キャン)が増え、やりたいこと(ウィル)が見つかる可能性がある、という話だ。
自分の先輩や上司でさえ先が読めない時代が到来している。だからこそ、新入社員はまずは厳しい現実を受け入れる必要がある。
給料をもらうということはプロフェッショナルになるということだ。ストレスがかかっても、やるべきことをやっていれば、やれることが増えてくるものだ。
そうすることで成果が出て、多くの人から感謝され、働きがいを感じるもの。現場に行ったら、やりたくないこと、苦手なことも任されるかもしれない。だが、それは誰でも一緒である。
サポートしていくから、しっかりとやっていこうと、採用活動の最中から丁寧に伝えるべきだ。きれいごとばかり言っていると、こんなはずじゃなかったと言い、辞めてしまう新入社員が続出してしまう。
繰り返すが、ポイントは「マスト(Must)」「キャン(Can)」「ウィル(Will)」。この順番である。
期待された成果を出さない限り、本当の意味の「働きがい」は感じられないのだから。
横山 信弘(よこやま のぶひろ)Nobuhiro Yokoyama
経営コラムニスト
企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。『絶対達成マインドのつくり方』『絶対達成バイブル』など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。