その後の展開は早かった。
「翌年、私たちはフィリピンのビーチで新年を迎えたのですが、そこでクリスから『Will you marry me?』とプロポーズされました。もちろん私は即イエス! 思いを伝えられない苦しい期間があったぶん、幸せが怒濤のごとく訪れているかのようで、本当にうれしかったですね」
結婚報告に祝福の声が殺到
ちなみに、クリスさんのどこに一番惹かれた?
「クリスは思いやり深く、周囲の人を家族のように大事にします。パリは移民が多いせいか自分の権利を声高に主張する人が多く、当時の私もその考えに染まっていました。ですから、初対面で『こんな心が温かい人がいるなんて』と驚き、気がついたらほれ込んでいたんです。私は彼に影響を受けて、人間として、よりいい方向に変わることができたと思います」
しかし、実際に婚姻届を出すきっかけがなかった。
「おととし、保護犬を引き取って、一緒に暮らすようになりました。すると2人と一匹でファミリーのような関係性が築かれていき、それならちゃんと家族になろうよ、ということで婚姻届を出すことにしたのです」
それに加えて、2人はもうひとつ大きな決断を下す。それは結婚を公表すること。
「それ以前もインスタグラムにクリスが登場することはありました。でも、どういう関係か説明することはなかったので、『誰?』といぶかしんでいた人もいたかと思います。そこで結婚したことを皆さまにお伝えすることを決意。私は学生時代に女性的という理由で仲間外れにされた経験もあるので、日本でどう受け止められるかわからない怖さはありましたが、覚悟を決めて結婚報告をインスタにアップしました」
すると離れていくフォロワーもいたが、通常の30倍ものお祝いや応援のコメントが寄せられる結果に。
「LGBTQ当事者の方や息子さんが当事者で将来を心配していたお母さんから、『勇気づけられた』というコメントもいただき、公表して本当に良かったと思いました」
最後に今後の目標は?
「これまで10万人以上の方を指導してきた中で、『私は美しくない』という自己否定から床バレエを始める人をたくさん見てきました。そんな人を内面から幸せにするのが私の目標。『自分はできる、美しい』と言い聞かせながら、とにかく30秒間、床バレエをマネるだけ。それで簡単に身体は変わるから、ぜひトライしてほしいと思います」
取材・文/中西美紀