断捨離とは簡単には辿り着けない深淵な「道」
やましたさんは、「断捨離」は、自己啓発でもノウハウでもスキルでもないという。
「私は“道”だと思っています。うれしいのは、断捨離に関わってくれる人は“断捨離歴○年”と言うんです。茶道や華道の稽古を何年やってます、という感じで。それが“収納歴○年”だとちょっと違うじゃないですか。でも“断捨離歴”だとすんなり使える。だって“道”ですから。やればやるほど道の深さがわかってくる、そんな思いがある。22歳から40年以上かかっているけど、いまだに道半ばだと思ってますしね(笑)」
最初の著書の大ヒットから、やましたさんのもとには、多くの出版社から単行本の依頼が殺到したのだが、彼女は当初すべて断ったという。
「最初の本を出してうれしかったけど、これ以上書けないなとも思ってました。ただ、講演やセミナーなどオファーは来るけど自分だけじゃ対処しきれない。そんなとき、谷口さんと出会ったんですね」
経営科学出版代表の谷口暢人さん(55)は、出版社の編集者だったが、知り合いの著名デザイナーの家を訪ねたときに、家がずいぶん片づいていたのに驚いたという。
「その人が実はこの本を読んで断捨離を始めたんだよ、と言ったんですね」
彼は自分がいかに過去の栄光や親への罪悪感にとらわれていたのかを知ったという。
「こんなに人に影響を与えることもあるんだ、面白い」
そう思った谷口さんは、出版社を退社し、現在の会社を立ち上げ、やましたさんのマネージメント、セミナーの運営、オンラインビジネスなどを手がけるようになったのだ。
「やましたさんは面倒見がいい。そしてとにかく明るい。僕たちはその明るさに甘えているだけなんです」と笑う。