日本と海外の大食いコンテンツの違い
テレビのコンプライアンスを考えたとき、大食い番組の現在の立ち位置はどうなのか。「高校生の主張はわからないでもない」としながらも、「大食いまで規制すると映像表現の幅が狭まってしまう」
と指摘するのは、阪南大学国際コミュニケーション学部教授の大野茂さんだ。放送文化論を担当し、自身も16年間、ディレクターとしてNHKに在籍していた経験を持つ。
「犯罪を助長するわけでも、人権を侵害するような行為でもない。不愉快といった違和感についても、例えば、“私は不倫が許せないのでそういったドラマは作らないほうがいい”といった問題提起によって、ドラマの幅が狭まるのはおかしいでしょう。もちろん、大食い番組はドラマと違いリアリティーショーです。そのため非難にさらされやすいという性質がありますが、食べ物で遊んでいるわけではない」(大野さん)
食べ物を粗末に扱うようなケースは、“道徳的に守らなければいけないルール”であるコンプライアンスに反するが、大食い番組は「遊んでいるような見せ方で作られてはいないし、悪意も感じられない」と大野さんは付言する。たしかに、万が一に備えドクターを配置し、過去にはドクターストップによって選手が不戦敗になったこともある。
「大食いをバラエティーとして捉えるか、スポーツとして捉えるかによって見方が変わってくる。マラソンやボクシングは顕著な例ですが、“苦しい”という表情は、スポーツであれば違和感は覚えませんよね。むしろ、見るものに“すごみ”すら訴えかけてくる。番組を作る上で、こうした使い分けは必要かもしれません」(大野さん)
この意見に同調するのが、前出・MAXさんだ。
「大食いチャレンジ系のYouTube動画は、食べ方が汚いと再生数が伸びづらい。楽しそうに美味しくバクバク食べる……つまり苦しそうに食べていないほど再生数が伸びる。反面、フードファイトのような勝負の側面が強調されると再生数が伸びづらいですし、否定的な意見が強くなる。どちらも大食いの素晴らしさですし魅力だと思っています。その中で、後者を表現することが難しくなってきているからこそ、スポーツ的な魅せ方を意識していく必要があるのではないかと思います」(MAXさん、以下同)
その代表的なコンテンツが、MAXさんも参加した経験を持つ、7月4日のアメリカの独立記念日にニューヨークで行われる『ネイサンズ国際ホットドッグ早食い選手権』だ。
「アメリカは大食いが完全にスポーツとして確立していて、FOXをはじめとしたテレビ局が生中継をするほどです。僕も初めて参加したときは、その熱狂っぷりに圧倒された。と同時に、こんな世界があるのかとアドレナリンが出た」