結婚したくなくて、泣いてイヤがった
世の中は高度成長期。忙しくても、おしゃれやレジャーも楽しんだ。流行のミニスカートもいち早く着て、舞台で披露。
「お父ちゃんには“太い脚を出してカッコ悪い"って叱られましたけど。流行は取り入れたほうがいいでしょ。私は何でも人より先にやりたいの。昭和30年代に、ゴルフもやってたし、運転免許も取りました。“これからの女は運転ぐらいできたほうがいい"と思って、習いに行って。試験もちゃんと1回で通ったんですよ」
人気絶頂だったころ、花江さんは28歳のときに結婚。
「ウチは結婚したくなくて、泣いてイヤがったの。小さいころから芸能界にいて、女の人をダマす男の人をたくさん見てきたから。結婚なんかせんと、好きな舞台をやっていたかった」
長女の歌江さんの強烈なすすめに押し切られたという。
「歌江姉ちゃんが“この人やったら間違いない"と勝手に話を進めてしもて。顔は知ってる程度の相手と、無理くり結婚したという感じでした。別府に新婚旅行に行く途中でも、まだイヤやなぁと思ってたんですけど。現地に着いたら、2番目の姉が『おーい!』と突然現れて。ウチが途中で逃げて帰ってこないように見張りにきたらしい。だから照枝姉ちゃん同行で、新婚旅行をしたんです(笑)」
相手は7歳年上の放送局のディレクター。花江さんが仕事を続けることは最初からの条件だった。
「ウチは朝から晩まで働いて、泊まりの仕事にも行く。夫はよう辛抱してくれはったと思います。そのかわり、家に帰って来られるときは、自分で料理するようにしてました。親と一緒にいたら上げ膳据え膳やけど、結婚したらそうはいかん。
でも、夫はお給料を全部渡してくれてましたから。生活費は夫の稼ぎでやりくりして、私の収入は全部貯金。おかげで家も買えました。あれだけイヤがったのに、結婚したら1回もケンカせず、うまいこといったんです。強引にすすめてくれた歌江姉ちゃんに感謝ですわ」
仕事もプライベートも充実していた。しかしやがて、共演者にイヤがられるほど、姉妹は激しいケンカをするようになってしまう─。
構成・文/伊藤愛子●いとう・あいこ 人物取材を専門としてきたライター。お笑い関係の執筆も多く、生で見たライブは1000を超える。著書は『ダウンタウンの理由。』など