目次
Page 1
ー “子どもを楽屋に連れてくるのは迷惑や”とケンカに
Page 2
ー 「一緒に舞台出るのがイヤ」と苦情を言われるほど
Page 3
ー 照枝姉ちゃんは母の死に目にはあえず

 

 お笑いの世界は大きく変化しつつある。女性芸人が多数登場し、女性が自らのアイデアと表現で人を笑わせる、新しい時代となった。「女は笑いに向いてない」と言われた時代から、女性が人を笑わせる自由を手に入れるまで。フロンティアたちの軌跡と本音を描く。かしまし娘で活躍した、正司花江さんの第3回。

“子どもを楽屋に連れてくるのは迷惑や”とケンカに

 姉妹のトリオ漫才・かしまし娘は昭和31(1956)年結成。長女の歌江さん26歳、次女の照枝さん22歳、三女の花江さん19歳のときだった。デビュー直後から人気となり、劇場でもテレビでも活躍。しかし、結成25年のとき3人での活動を休止する。人気、実力ともにトップクラスだったかしまし娘は、なぜ別々の道を歩むようになってしまったのだろう。

 歌江さんは、かしまし娘結成直後に再婚をし、男児を出産。花江さんは昭和39(1964)年に結婚。その後に照枝さんは結婚し出産。それぞれ家庭を持ちながら、仕事を続けていた。

歌江姉ちゃんの子どもがまだ小さかったころ、仕事の現場に連れてきたことがあってね。そのとき照枝姉ちゃんが、“子どもを楽屋に連れてくるのは迷惑や”ってぴしゃっと言うたんで。歌江姉ちゃんが泣き出して大ゲンカになったことがありました。

 面倒を見てくれる人が休みのときは、放っておくわけにはいかんしね。歌江姉ちゃんは一度、勘当同然で家を出てるから、両親の世話になることもでけへんかったんでしょう」

 照枝さんは結婚後、両親と同居し、預けることができたため、子どもを楽屋に連れてくることはなかった。

「照枝姉ちゃんは、足の不自由な妹の面倒を見てくれたし、両親と一緒に暮らしてくれた。それぞれに事情があって、自分の生き方の我を通したからぶつかってしまったんでしょう。だから、私は姉2人がケンカしても止めなかった。でもね、あとに引きずることはなかったんです。しばらくたてば、また一緒にごはん食べたりする。そこは姉妹の良さやと思います

 花江さんは、子どもを授からなかった。

「子どもがいないことは……今となってはどうってことないと思っています。大人に囲まれて育ったから子どもがそんなに好きやなかったし。ウチみたいなわがままは、子育ての苦労をせずにすんで良かったのかもしれません。姉たちとはずっと近所に住んでいたので、甥っ子たちの成長を間近で見ることもできたしね」