食べて終わりではなく移住までつなげる施策

 田中さんも数多くののプロジェクトに携わってきた。

宮城県登米(とめ)市のソウルフード『はっと』のプロモーションでは、『登米無双』というPR動画が100万回再生を達成。大きな話題となりました」

 はっととは小麦粉を練ってお湯でゆでたものを汁ものに入れたり、アズキと絡めたりする郷土料理。

「もともとは『市の知名度を上げたい』という依頼でした。そこで何をPRするか考えたのですが、登米市は9つの町が合併してできた自治体で、それぞれ文化や生活習慣が異なる中、唯一共通してべられていたのが『はっと』。

 江戸時代に当時の大名が『こんなおいしいものを農民にべさせるのはご法度だ!』と言ったことがその名の由来という説もユニークで、それを念頭に置いて動画を作ったところ、面白いと多くの人が注目してくれました」

 プロモーションは成功したが、こういったのプロジェクトには課題もあるとのこと。

「ふるさと納税もそうですが、べ物は『おいしそう』『おいしかった』だけで終わりがち。そこから地域への興味関心にどうつなげるかは大きな課題です」

 関連ではないが、この点に工夫をこらしたプロジェクトも。

「私は鳥取市のシティプロモーションも担当しています。そちらでは今、若者に大人気のアーティストである新しい学校のリーダーズとコラボ。新曲『青春を切り裂く波動』のMV撮影を鳥取市で行いました」

5月中旬に公開された、新しい学校のリーダーズ『青春を切り裂く波動』のMVは鳥取市で撮影(新しい学校のリーダーズ公式YouTubeより)
5月中旬に公開された、新しい学校のリーダーズ『青春を切り裂く波動』のMVは鳥取市で撮影(新しい学校のリーダーズ公式YouTubeより)
【写真】「新しい学校のリーダーズ」のMV撮影は鳥取市で行われた

 人気アーティストが鳥取市でロケをしたということだけで話題になるが、それだけでなく聖地巡礼として現地を訪れるファンも数多くいる。

「地域に実際に足を運んでもらうことはプロモーションの主要な目的のひとつ。地方はどこも過疎化とともに高齢化が進んでいますから、多くの自治体は特にZ世代といわれる20代以下の若い世代からの認知を高めたいのです」

 これは移住促進という目的からも理にかなっている。

Z世代はフットワークが軽いのが特長。何度か訪れるうちにその地域が気に入り、『2~3年間引っ越してみようかな』と軽い気持ちで移住を考える若者は珍しくありません。若い世代のほうが移住への関心が高いことは、調査でも明らかになっています」