一方で、ニホンウナギは絶滅危惧種とされている。近いうちに途絶えてしまう可能性もあるのだろうか。中央大学法学部教授でウナギの生態研究や保全と持続的利用を目指し活動する海部健三氏に聞いた。
「“近いうち”の基準にもよりますが、10年から30年程度の期間のうちに絶滅することは考えられません。絶滅よりも、資源として利用できなくなる、食を含む文化を維持できなくなる状況が先にやってくると考えられます」
技術の発展に“ルール整備”が追いつかず…
そもそも、ニホンウナギ減少の主な要因は何か。
「“産卵場のある海洋環境の変動”“河川や沿岸域など成育場環境の劣化”“過剰な消費”と考えられていますが、このほかに病原体の侵入・蔓延なども懸念されています」(海部氏、以下同)
生息数減少の歯止めに有効な手立てのひとつとして、養殖技術の進歩も望まれる。現状の技術はどれほど進んでいるのか。
「天然種苗と比較して値段はまだまだ高いとはいえ、人工種苗生産技術、いわゆる完全養殖技術は、すでに実用可能な段階に入っています。しかし、人工種苗から養殖したウナギの流通ルールが定められていないために、市場での流通が遅れています」
技術の発展にルール整備が追いついていない点を問題視。
「人工種苗生産技術は日本の誇るべき技術であり、世界唯一の“サステナブルなウナギ”と言えます。資源の持続性に対する配慮を掲げ、厳しい調達基準を設けている大阪・関西万博でも販売すれば、いいアピールになるでしょう。しかし、調達方針を管理する部署との調整が難航していると聞いています」
ウナギの密漁など不適切な漁獲や不透明な流通は大きな課題となっている。そして、海部氏は資源の持続性に対する無関心が状況を悪化させる一因だと指摘。
「状況を理解したうえで食べるか食べないか、よく考えることが重要です」
土用の丑の日、改めてウナギ資源の持続性についても深く考えたいところだ。