経験からできることが増えるからこそ
綾瀬に、女優としての信念を尋ねてみると、
「経験を積むとその流れでできちゃうこともあるんですけど、ちゃんと心から、役の感情で演じることは大事にしています。“きほんのき”だからこそ、慣れからくる小手先にはならないように。そこはいつも気をつけています」
ストーリーが進む中で、昔一緒にいた人々の存在が、現在の百合をつくり上げていることもわかってくる。あのときの経験や決断があったから今がある。そんな女優としての原体験はあるのだろうか?
「アクションに関しては、親からいただいた身体のおかげかな。小さいときから運動はすごく好きだったし、たくさんしていたし。
あとは、当たり前かもしれないですけど、東京に来なかったら今のお仕事もしていなかったかもしれない。来てみてよかったな、と思っています」
綾瀬の芸能界入りのきっかけは、『ホリプロタレントスカウトキャラバン』。15歳のときだった。
「私は(オーディションを)受けたというより、友達についていった感じで。もともと女優になりたいと思っていたわけではなかったけど、“なんだか面白そう”というノリで。(選考が進み)東京にも行ったことがなかったから“面白そう”“ワクワクする”みたいな気持ちで。もちろん、頭で考えると地元の学校にも通いたいし、行ったことのない東京は怖い。その両方の気持ちがあるんだけど、でも不安なことって言い出したらキリがないから、素直に飛び込んでみました」
デビューして23年。そのキャリアと実力と人気は誰もが知るところ。
「その“まず飛び込んでみる”というスタンスはこれから出会うことや向き合うことに対しても、当てはまることなのかなと思います」
最強のヒロインを演じる最強の女優は、面白がる気持ちと飛び込む勇気からつくられていた――。
髪をバッサリと短く
本作のために、長かった髪を短くしている。大正モダンなボブは、レトロでおしゃれ。そして、綾瀬にとてもよく似合っている。
「ここまで短くしたのはいつぶりだろう? 別のヘアスタイルやカツラなどの案もあったんですが、行定勲監督と相談する中で“こういう髪型はやったことがないうえに、大人っぽくて女っぽいのでは?”という感じになり、“じゃあ切りましょう”と。2か月くらいは(撮影ではない)普段でも、完全に“百合スタイル”で過ごしていました」