忙しく働く著名人にも闘病経験者が多い乳がん。今や日本では、日本人女性の9人に1人が罹患するといわれている。しかし、早期発見できれば、がんの中でも生存率は高い。がんサバイバーがどのように乳がんを見つけて治療をし寛解に至ったのかをご紹介。病に負けない令和の生き方とは──。
作家の室井佑月さん(53)に乳がんが見つかったのは2019年、49歳の夏だった。
乳がん経験者・室井佑月「早期発見でとんとん拍子に手術、治療へ」
「たまたま漫画家の友人と食事をしたとき、そのアシスタントが乳がんで亡くなったことを知ってショックで……。帰宅しても乳がんのことを考えていたんです。お風呂に入ろうと浴室へ行くと、私のミスで浴槽にお湯がたまっていなくって。しかし、すでに全裸だったので、湯を入れている間に自分の胸を触ってみたら、梅干しの種みたいなしこりに気づきました」(室井さん、以下同)
慌てて友人に電話し、翌朝いちばんにかかりつけの病院へ。普段であれば予約がいっぱいでなかなか診てもらえないところ、その日は大雨で予約のキャンセルが出ていたため、タイミングよく乳がんの名医に診てもらえることになった。
細胞診検査やエックス線、エコー検査を受けた結果はステージ1。そのときは入院のためのベッドの空きがなかったが、ちょうどお盆で多くの患者が帰宅する間に、さらに奇跡的に手術をしてもらえることに。
実は、室井さんは若いころに豊胸手術をしており、胸に生理食塩水のバッグが入っていた。
「担当医からは手術前、『なんでこんな余計なことをしたんだ!』と怒られちゃいました。手術ではこのバッグを取り出すのが大変なんだそうです。
このバッグが破れる危険性があるのでマンモグラフィー検査を受けられず、乳がんの発見が遅れてしまうケースもあるそうで。肩こりもひどかったし、残念ながら私の場合、豊胸はいいことが何もなかったですね……」
食塩水のバッグが除かれ、手術直後は垂れ下がった胸にショックを受ける。その後の放射線治療では乳房全体が青紫になったり、肌がザラザラしたり、歯が抜けたりと副作用に多少悩まされたことも。
「それでもとんとん拍子で治療が進み、自分でもビックリ。今、服用している抗がん剤は20年続ける必要があり、半年に1回、経過観察で病院を受診しています。私はもともと、糖尿病の持病もありますし、怖がりな性分なので体調が悪いとすぐに大騒ぎしてしまうんです。でも、今は自分の身体に関しては、心配性なぐらいが“ちょうどいい”と思っています」
(構成・文/鈴木晶子)