デビュー後3年たったがヒット曲も生まれない

 不倫相手との関係は泥沼化していた。彼の存在もシンシアの生活を追い詰める大きな要因となっていた。

「サトシはお金にルーズな人でした。『急にお金が必要になった。でも今手元になくて。明日になれば用立てられるから』などと言っては、あの手この手で私からお金を引き出していきました。

 別れようと努力もしたけど、そのたび下手に出ては甘えてきて、プレゼントを贈っては優しさを見せる。すべてはまやかしではあるけれど、私もついほだされてしまう。

 彼と付き合い始めてから、次第にお酒を覚えるようになっていきました。どうにもならない関係に心身共に疲れ果ててしまった。それもどこかでシンガーとしての活動に影を落としていたと思います」

 期待の新人としてメジャーデビューしたものの、芽が出る気配はない。事務所との亀裂は修復できないところまで進んでいく。

「気づけばデビューから3年がたっていました。私らしくない事務所の売り出し方への不満も募り、社長に退所を申し出ました。社長は激怒したけれど、レコード会社が間に入って、なんとか退所にこぎつけました。

 デビュー曲ですぐバンと売れる歌手はまれで、活動を続けていくうちにいい曲と巡り合い、そこでようやくヒットする。事務所もそれを期待していたはずです。『NHK紅白歌合戦』の予選会に出場したり、歌番組にかけ合ったりと、いろいろ手を尽くしてもくれました。だけどなかなか波に乗り切れなかった。

 当時歌番組に出演したときの動画がYouTubeに残っています。今改めて見ると、粘り強く続けていればやがてヒットも生まれていたのではないかという気がします。でもたぶんタイミングがズレていた。最初にデビュー話が持ち上がった22歳がきっとそのときでした」(次回に続く)