連日日本のメディアを賑わせている大谷翔平選手。
7月に行われたオールスターでは、観客席から「come to Seattle」コールが起こったり、他選手からも「オオタニサン、バットニ、サインクダサイ」と言われたエピソードまで、大谷人気を証明するかのような話題をふりまいた。
野球がよくわからない層でも、ニュースを追ってしまう大谷選手。ベンチの一挙一動、ファンとの交流、コーチとのやりとりなどなど、なにもかもが注目の的だが、
コメント欄では「メンタルが落ち込んだ時に大谷翔平の記事を読む」「疲れたときについ記事を読んでしまう」といった声もあがっている。
多くの日本人に影響を与えるようになったWBC
精神科医の前田佳宏医師は実際に「私の患者さんでメンタルの状態が悪かった人も、大谷選手を見てなんだか元気が出た、と話す人がいます」と語る。
「今までも、アメリカという野球の本場でのチャレンジに関心を抱いていた人は多いとは思いますが、ここまで多くの日本人に影響を与えるようになったのは、やはりWBCからではないでしょうか」
大谷選手を見て、あのWBC優勝の感動がよみがえる、あの感動を再びといった期待が、メンタルへも影響するほどの人物へと押し上げたのではないかと分析する。
「パニック障害の人などは、例えば電車を見るだけでも、そのことを考えただけで発作が出てしまうという人がいます。その逆で、大谷選手の活躍を見て、WBCを見ていたときの興奮や感動、自分が奮い立つ気持ちなどいろんな感情が呼び起こされ、メンタルへいい影響を与えるといった現象が起こっているということもよくあります」
精神医学としては、薬とは違ってその影響がその人それぞれの“心”へどう作用するかは十分に研究されていない。
「けれども、実際の診療では、気持ちややる気は、周りからの影響を多かれ少なかれ受けていると思われます。つまり悪い影響もよい影響も、意外と周りから影響を受けている可能性がある」と前田医師は言う。
「仕事で疲れている、なんだか落ち込んでいる、といった人が大谷選手の活躍を見て元気になるといったことは、うまくいかなかったことを忘れさせ、後ろ向きになる気持ちを払拭してくれるような、そんな効果があるかもしれません」
ここまで国民の関心が高いのは、まさに今彼が頑張っている、前人未到の記録に挑戦している最中だというライブ感が大きいとも。
「毎日変わる情報で、期待や楽しみが増えますよね。いい刺激を受けて、明日どうなるか、ともに頑張っている感覚が強くなる人もいます」