個人情報を握られ脅されるケースも
途中で怪しいと思いながらも引き返せない事情もある。
「詐欺グループとのやりとりの中で、身分証を提示していたり、自分の写真を送っているなど、個人情報を握られ、身動きがとれなくなるケースは非常に多いです。
勤務先を知られて“いつでも会社に連絡する”と脅される人も。でも、それはあくまでもお金をむしりとるための脅し文句」
少しでも不審な点を感じたら、すぐに弁護士や消費者センターに相談すること。その場合、証拠となるようなやりとり等はすべて保存しておくことを忘れてはいけない。
さらに、詐欺被害に遭って困っている人をカモにしている悪徳な法律事務所もあるので気をつけたい。担当弁護士と面談させてくれない事務所は要注意。
また、返金されるかわからないのに高い着手金を要求する事務所も、できれば避けたほうがよい。セカンドオピニオンとして他の事務所にも相談をするのが賢明だ。
「詐欺に遭った人は、一人で不安を抱え込んでいることがほとんど。先日も60代の女性が、“子どもに知られたら怒られるから”と家族に内緒で相談に来ました」
冷静に考えたら儲かるはずもない副業に手を出したことを恥ずかしいと思っている人が多いという。
「でも、今はスマホを見ているだけでも副業詐欺の広告につながってしまう時代。誰でも引っかかる可能性がありますし、そもそも悪いのは詐欺をする側。泣き寝入りして、大きな借金を背負うことがあってはなりません!
周囲に相談しづらくても、弁護士や消費者センターに相談すれば、絶対によいアドバイスをもらえるので、おかしいと思ったら脅しに応じず相談を」
副業詐欺に泣いた人たち
うまい話を信じて借金100万円超え!
ケース1「ブログを書くだけならできるかも!?甘い考えで150万円も借金しました」
老後に不安を抱えていた60代のAさん。
ネット広告で見た“ブログを書くだけ”という副業に手を出し、稼げる書き方を教わるという名目で消費者金融3社から借り入れし、150万円を支払った。
“皆さんすぐに月200万円は稼いでいます”という詐欺師の言葉に、ブログなど書いたこともなかったが、「つい“私にもできるかも”と思ってしまった」と後悔をにじませる。
現在、弁護士に相談し、7割ほど返金される見通しだが、それでも残った借金の返済が難しく、任意整理手続きを行い5~6年かけて返済する覚悟をしている。
ケース2「自己破産するしかない……。恥ずかしくて誰にも相談できず」
フリマサイトを使って簡単に転売で稼げるとだまされ、250万円をつぎ込んだ40代のBさん。
“スマホ1つで仕入れから転売までできる”“サポートも行うから安心”と言われ、初期投資のつもりで消費者金融5社から借り入れした。
画面共有アプリを使用しながらの借り入れをするうち「“詐欺かも”と思いましたが、すべてが監視下におかれたような感覚になって、途中で断ることができなくなりました」
現在は、弁護士を通じて返金請求をしているが、返金額によっては自己破産も視野に入れている。
(取材・文/河端直子)