ここで……最初に覚えた数字を“逆の順番”にして、口に出して言ってみてください。戻って見てはいけません。覚えたはずの5桁の数字がすんなりと出てこなかったら、ワーキングメモリの機能に黄色信号。脳の老化が始まっているかも!
老化防止のカギはワーキングメモリ
脳にはさまざまな働きがあり、その部位によって司る機能は違う。
脳を老けさせないためには、そのすべてをバランスよく使って鍛えることが理想的だが、その中でも特に脳の老化に大きく関わっているのが「ワーキングメモリ」という機能だ。
「これは、ある情報を脳に一時的に保持しながら、計算したり、考えたり、何らかの作業を行うこと。つまり、『記憶(メモリ)』と『作業(ワーキング)』の合体です。この機能は高度な知的能力のほとんどに関わっており、高く保たれていれば、脳の老化が食い止められていると考えていいでしょう」
私たちはふだん、情報を記憶にとどめるだけでなく、実はその情報にさまざまな処理を加えて行動している。例えば、地図を開いて場所を記憶し、記憶をもとにその場所へ移動する、といったように。
先に紹介した脳力チェックの質問も、このワーキングメモリを測るテストのひとつで、もの忘れ外来で最初に行われる基本的な認知テストと同じものだ。数字を覚えるだけでなく、その数字を逆に思い出して発話する、という作業が加えられている。
脳の老化が進んでしまうと、この「記憶しながら作業する」ことが難しくなってしまうのだ。
ピークは過ぎても鍛えれば伸びる!
人間の知能には、大きく分けて2つの種類があるが、ワーキングメモリはそのうちの「流動性知能」に含まれる。そしてそのピークはなんと18~25歳。あとは、衰えていく一方と聞くと、「年だから仕方ない……」という気持ちにもなるが、諦めるのはまだ早い。
というのも、かなりの高齢者であっても、鍛えることでワーキングメモリのスコアが伸びたというデータは山のようにあるからだ。
「認知テストのスコアが上がれば、すぐに日常生活の質も向上するとは必ずしも言えませんが、さまざまな効果が期待できることは確かです。
もの忘れが少なくなる、仕事や家事がスムーズにできるようになるほか、コミュニケーションが改善することも。複数のことを同時にこなす能力も鍛えられるでしょう」