「このご時世にリスクを冒す必要性もない」
コンプライアンス意識が高まり、テレビ局は安易にオカルト番組を企画できない状況になっている。
「最近では宜保愛子さんの過去映像すら使えないんです。“霊視”などのパフォーマンスは裏取りができないため、もし視聴者から“ウソなんだろ!”というクレームがあっても、ちゃんとした説明ができない。このご時世にリスクを冒す必要性もないという風潮です」(テレビ局関係者)
メディア論を研究する立命館大学の飯田豊教授は、心霊番組の減少には2つの要因があると考えている。
「1つはやはりコンプライアンス。日本民間放送連盟が定める“放送基準”には“占い、心霊術、骨相・手相・人相の鑑定その他、迷信を肯定したり科学を否定したりするものは取り扱わない”という規定があります。
それなら明確に科学を否定せず、半信半疑であれば許容されるという解釈がなされてきましたが、今は通用しにくくなりました」
もう1つは、テレビからネットに舞台を移したこと。
「ネットを中心に活躍する怪談師も登場し、テレビ番組でなくてはならない理由がなくなりました。放送基準に抵触するリスクを負ってまで番組を制作する意義を見いだせないのではないでしょうか」(飯田教授)
主戦場を移した1人が、怪談でおなじみの稲川淳二。
「今も全国各地で『怪談ナイト』という公演を行っていて、YouTubeチャンネルを持っています。テレビでは見られないことにより、むしろ価値を高めている側面もありますね」(前出・スポーツ紙記者)
最近の“怪談”活動について稲川に話を聞こうとしたが、
「全国ツアー中で忙しいため、取材はお受けできません」
とのこと。
もはや怪談師が番組に出たがらないというのが、テレビ局にとっては“ほんとにあった怖い話”……。
飯田 豊 立命館大学産業社会学部教授。専門はメディア論、メディア技術史、文化社会学。著書は『テレビが見世物だったころ』『メディア論の地層』など