「年だから」で見逃されることも早めの投薬治療で“最悪”を防止
「うつは『心が弱い』から患うのではなく、脳の病気です。身体的、精神的なストレスを受けることで、脳の神経細胞が傷つき、神経伝達物質の分泌量が減ることが原因とされています。
もともとセロトニンの分泌が少ないところに、精神的ストレスが加わったため発病するということも考えられます」
いずれにせよ主な原因は、神経伝達物質のセロトニンの分泌量の低下だ。セロトニンは、加齢により分泌量が低下する。さらに、高齢になるとストレスを感じやすくなり、うつ病に進みやすくなる。
「老人性うつでは精神的ストレスが引き金になることが多いようです。配偶者や近親者の死、自分や家族が病気にかかったなど悲しい出来事のほか、娘や息子の結婚、独立などおめでたい出来事もうつの誘因になります。これは高齢者が、精神的に環境の変化に対して弱いからです」
定年を機にうつを発症することも多く、これも環境の変化が起因する。病気になったり、後遺症が出るなど身体的なストレスも影響する。
「脳梗塞など脳血管障害を患った人は老人性うつにかかりやすいことがわかっています。糖尿病患者もうつになりやすいので注意してください」
また、一般的なうつは朝がつらいが、老人性うつでは夕方から調子が悪くなるという。
「高齢になると誰でも脳のパフォーマンスが衰え、夕方になると脳が疲れてきます。そのため、夕方に症状が出やすいと考えられています」
さらに遺伝的な要因が少ないことも、老人性うつが見つかりにくい一因になっている。
「一般的なうつ病は遺伝的素因があり、再発を繰り返します。しかし、老人性うつに遺伝要因はほとんどなく、周囲もうつ病と結びつけにくいのかもしれません」