これらは納棺師が行う。アカデミー賞映画『おくりびと』の主人公の職業だ。
わざと遺体を変色させメイク代を上乗せ
「顧客に対しての追加費用等、大手を中心に予算管理、コストダウンの要求が強い葬儀業者があります。“利益を出せ”というまさにビッグモーター的な業者ですね。そういったところが必要量のドライアイスを使わずケチり、結果遺体が腐敗してしまう。
そこで“変色してしまっているので、これは納棺師さんにメイクしてもらわなきゃいけませんね”とメイク代を追加で遺族に請求する。もちろんこれはオプションですので、遺族に許可を取ってから行います」
許可を取って請求しているから問題ないということはない。親や親族が腐敗しているのをそのままにできる遺族はそうそういないであろう。
「自宅まで遺体を別の業者に運んでもらい、葬儀は弊社が担当することがあります。自宅まで運ぶ際も遺体に対し、別業者がドライアイスを使っているわけですが、私が見た段階で“え、これだけ”という量で驚きます。その状態だとまずいので、ドライアイスを追加します」
遺族は基本的に一般人。ドライアイスの必要量を見抜ける人など皆無であろう。
「遺体は変色してしまったら元には戻りません。そのためメイクで補正してあげなきゃいけなくなる」
なぜそのようなことが起こってしまっているのか。
「コスト削減のためにドライアイスをケチって使う。メイク代はノルマに含まれている。ノルマを課している業者のメイク代はだいたい5万〜7万円。そのうち納棺師さんに入ったのは1万5000円だったと、実際にこのようなメイクを担当した納棺師さんに聞きました。メイクがノルマになっているとも」
車を壊して、修理代を稼ぐ業者。遺体を腐敗させて、メイク代を稼ぐ業者……。
「どちらもやってはいけないことですが、私はこのような葬儀業者のほうが罪深いと思います。極論、車は“物”であり、修理すれば直る。しかし、遺体は腐敗してしまったら直りませんし、発覚したときの遺族の憎しみや怒りは想像を絶します。遺体が損傷しないように全力を尽くすのが葬儀業者であるはずです」