「本当は会社員になりたかった」
しかし、性自認は女性である彼女にとって、髪は大切なものなのでは……。
「仕事して自分の生活を守ろうとする中で、生活にまったく関係ない不利なことを求められますよね。例えば、女性は髪の毛がキレイであるべきだとか、ハイヒールを履くべきだとか。そういった、ジェンダーの概念を壊してしまおうと思ったんです。もっと自由でいいだろう、と」
では、アイドル活動は継続しているのだろうか。
「最近は時折ライブを行うぐらいで、そこまで芸能活動はしていないんです。私としてはアイドルがやりたいことではなかったんですよ。そもそもアイドルのまねごとをして、個人的に楽しんでいただけで……。本当は定職に就いて会社員になりたかったというのが本音でした」
その背景にはロストジェネレーション世代としての苦しみがある。きららさんは、大学卒業後に地元の企業に就職するも、1年半で退職。その後、非正規労働者として大手メーカーで10年ほど勤務するが、薄給で長時間の労働を強いられる過酷な環境に限界を感じ、再び退職する。
「その後、実家を出てひとり暮らしをするのですが、『ノンフィクション』への出演が決まったころは就職活動もうまくいかず、社会に打ちのめされ絶望していた時期でした。なので“私の姿が全国放送されたら非難が殺到して、死ぬ覚悟ができるだろう”って自棄になって取材を受けたんです。それが、放送されたら“頑張って”と応援する声がたくさん届いたので驚きました。私が知っていた世の中とは違い、やりたいことをやっていいんだよって、自分を肯定して後押ししてくれる世界があることを知れたんですから」