認知症による徘徊、覚えられない暗証番号

 残り2ケースは、筆者の体験談である。2人とも女性で年齢はわからず、70代か80代ぐらい。初対面だった。

 3例目の女性には筆者が食事後、自宅へ戻るため歩いていたら話しかけられた。「◯◯へ行きたいんですけど、道を教えてください。娘の自宅があるの」と。筆者は方向音痴のため、スマホで検索するため質問した。「住所はわかりますか?」と聞くと、「わからない」との返答が。

 失礼だと承知の上で一瞬、A子さんの全身をチラリと見た。カバンすら所持していない。財布や携帯電話の有無を問うと、「持っていない」と答える。名前や年齢を聞いても「わからない」と言う。

 認知症による徘徊だ! ピンときたので、交番へ連れて行った。警察官の「よくあることなので、お気になさらず」という「よくある」という言葉が印象に残っている。

 4例目は、筆者と同じマンションに住む女性。エレベーターへ一緒に乗って挨拶をしただけなのに、「ちょっとうちに寄っていって」と誘われた。「初対面の人を自宅に招くのは危険ですよ」と注意を促しても強引だったので、「少しだけ」と応じると。

 暗証番号を入力するタイプの玄関キーがあとづけされているのに、鍵を差し込んでドアを開けた。「番号を入力する鍵は壊れた」とのこと。室内最奥には防犯カメラが設置されていたが、「何度業者を呼んでも来てくれない」そうだ。3つの前例を見聞きした後だったので、今ならわかる。彼女は認知症だったのだと。暗証番号は忘れ、業者は電話番号を間違えているのではないか。年齢とお子さんがいるかどうかは失礼だと思い、尋ねられなかった。

 先日、知人宅で分譲マンションの老朽化と住人の高齢化を扱うテレビ番組を観た。4例目の彼女は該当するかもしれない。

 家族や身内の認知症が気になる人は一度、「自分でできる 認知症 テスト」で検索してみては。「自分でできる」を入力せずに調べたら正直、認知症ではない筆者にも難しい問題があった。ご参考までに。

内埜さくら(うちの・さくら)●2004年からフリーライターとして活動開始。これまでのインタビュー人数は3800人以上(対象年齢は12歳から80歳)。俳優、ミュージシャン、芸人など第一線で活躍する著名人やビジネス、医療、経済や一般人まで幅広く取材・執筆。女性の生き方や恋愛コラムも手がける。