CM撮影の現場で起きた爆笑
――その度に、CMの放映を延長してきた?
「そうです。ただ、財津さんとの契約は1年更新なのですが、“かつてウチのCMを見て泣き止んだ子が、今は20歳になっている、これってどうなんや”という社内での意見が、契約の延長を今年で最後とする決め手になりました。本当は、今年の7月15日が契約の切り替えを行う時期だったのですが、なんとか続けられないかと、社内で反対されながら私ひとりがジタバタして、2か月ほど延長したんです。CMを制作した当初は“これで紅白歌合戦から依頼があったらどうしよう”なんて話をしたり、そんな思い出がいっぱい詰まったCMだったので、どうしても残しておきたいという気持ちがありました。こうやって話していても、いろいろな思い出が蘇ってきています」
――例えば、どんな思い出が?
「財津さんが出演されていたコメディー番組『てなもんや三度笠』を見て大ファンになり、CM出演をお願いしました。もちろん、藤田まことさんや白木みのるさんも大好きでしたが、財津さんが演じた浪人役の“~してチョーダイッ!”というセリフしかないと思ったんです。
実は、財津さんに出演をお願いしたのは、弊社CMの3本目と4本目でした。これで反響がなかったら、最後のテレビCMにしようと覚悟を決めて、お願いしたんです。なので、私が直接その思いを財津さんにお話しさせていただいて、CM制作の現場にはずっと立ちあわせていただきました。財津さんの動きを見て、『てなもんや三度笠』を思い出して嬉しかった。本番でも笑いが起きて、何回も撮り直しをしたことを思い出します。『探偵ナイトスクープ』の撮影では、大阪市内の幼稚園で撮影させていただき、そこでも財津さんに会って、大笑いさせていただきました。財津さんは“会長、銭勘定じゃなくて、好きでやっているんだよ”と、おっしゃってくださったのを覚えています」
――財津さんも、タケモトピアノさんに感謝していると、過去のインタビューで語っている。
「もう、本当に……ありがたかった……。契約を終了をすることとなり、ちゃんと日時を決めたうえで、改めて財津さんにご挨拶させていただこうと考えていたんです。“本当にありがとうございました”との気持ちを、直接、伝えさせていただきたいと思っていたのですが……」
財津さんと、ともに歩んできたタケモトピアノ。その思い出は、いつまでも鳴り響いている――。