まだ夢の途中。健康の秘訣は未来に希望を持つこと

日本ペンクラブ会長でもあった作家の故・遠藤周作さんとのつながりで日本ペンクラブ会員にも
日本ペンクラブ会長でもあった作家の故・遠藤周作さんとのつながりで日本ペンクラブ会員にも
【写真】今田さんが購入し過ごしていた18世紀の古城・ロゼール城、和訳すると『薔薇の城』。敷地面積は3万坪!

 9月14日、東京・代官山にあるフランス料理店「レストラン・パッション」に、今田さんはいた。

 鮮やかな白のスパンコールのドレスと白いヒール、胸元にはマダムイマダブランドの「青蜂」の美しいブローチが輝く。三越カルチャーサロン特別企画「今田美奈子先生の華麗なる世界〜歴史が伝える伝統のフランス料理」で熱弁を振るう今田さんは、1時間のトーク中、一度も座ることはなかった。

「ただのおもてなしではなく、幸運を呼ぶおもてなしでないといけない」と話すように、「青蜂」のブローチには幸福、聡明、裕福、勇敢を意味するアクアマリンが使用され、蜂は勝利の象徴だという。来客に幸せを感じてもらう─、徹底してその意思が通底している。

「乾杯はグラスを必ず下から上に上げてください。それでパワーを上げるんです。私も応援してますから、みなさんも応援してくださいね。では、乾杯」

 今田さんがそう挨拶し、乾杯を終えると、会場は心地よい高揚感でいっぱいになった。

「ムースの会」会員たちと研修旅行の記念撮影
「ムースの会」会員たちと研修旅行の記念撮影

「今田先生は、生き方を教えてくださるメンターでもある」と話すのは、この日、愛知県から参加した伊藤さよ子さんだ。「今田美奈子食卓芸術サロン」の卒業生からなる「ムースの会」の会長でもある。

「先生のサロンや教室には、人生に迷いを感じて学びに来られる方もいます。先生は、そうした人を寛容に受け入れ、パワーを与え、生き方を教えるんですね。指導するときも、穏やかで優雅、女神のようです」(伊藤さん)

 写真に応じ、たくさんの人に囲まれる今田さんの姿は、確かに光を灯していた。

 まるで、ニューヨーク港の自由の女神像のような、船上から目にする象徴のようでもあった。

 今田さんは、「まだ夢の途中にある」と語る。日本に、ヨーロッパの伝統菓子を本格的に紹介し、また、第一線で活躍し続け半世紀がたとうとしている。

「私がこれほど長く続けることができたのも、応援してくださる方々、卒業生の『ムースの会』、生徒、『アソシアシオン(友の会)』、各界の応援してくださる方々や身近な人々の支えがあったからこそと感謝の思いしかありません。

 母から『リーダーシップを持って学びに行きなさい』と言われたときは、まったくそんなつもりはなかったのですが、今では私の使命であると気づき、これまで生きてきました」

 取材中、今田さんの背筋はブレることなく、まっすぐ目を見て話し続ける。

「私の健康の秘訣は、年齢を気にせず、未来に希望を持つことです。これからも美と健康をテーマにしたサロン講座やお菓子セットなどもお届けしたいと思っています。そして私の体験から、未来に希望を持ち自信に満ちた子どもの教育にも力を寄せたいと願っています。希望が多すぎるかしら(笑)」

 成し遂げたいことはたくさんあるといい、中でも民間外交としてのおもてなしを構築したいと目を輝かせる。

「これからこそ、私の夢の集大成です」

 今田さんの教えや哲学は、多くの女性に影響を与え、連綿と受け継がれている。今田美奈子という存在自体が、ひとつの伝統として息づいている感さえある。ともすれば、彼女が切り開いた道はこれからも多くの女性たちの光となり、永遠の流行として憧れ続けられるに違いない。

取材・文/我妻弘崇

あづま・ひろたか フリーライター。大学在学中に東京NSC5期生として芸人活動を開始。約2年間の芸人活動ののち大学を中退し、いくつかの編集プロダクションを経て独立。ジャンルを限定せず幅広い媒体で執筆中。著書に、『お金のミライは僕たちが決める』『週末バックパッカー』(ともに星海社新書)がある。