そんな日々を支えたのもまた、アスリートならではの前向きさだった。
「株が下がっても、投資した会社がつぶれたわけでも、上場廃止したわけでもないから落ち込みません」
これからも投資をやめるつもりはない
2008年のリーマン・ショックでも5000万円の評価損を抱えたが、株価はやがて元に戻っていった。
「イギリスがEUから離脱するだけでその日の高値から1000円も日経平均が下がった。ちょっとしたことでも影響するので、新聞やテレビなどでの情報収集はとても大切。トランプ氏がX(旧Twitter)で“海外企業に増税する”と言っただけでも株がドーンと下がりますからね」
株を始めてから、世界情勢を自分のことと感じ、社会の動きに敏感になった。だからこれからも投資をやめるつもりはないという。投資は世界に目を向ける、いいきっかけになっていると語る。
今、もし株を始めるなら、何を買えばいいのか聞いた。
「このまま円安が進むなら輸出産業かなあ。でもそれより生活感で、自分の好きな商品やサービスの株を買ったほうがいいと思う」
以前、株に興味を持った女性スタッフに対して、川合さんはこう答えたという。
「“自分が好きなものをじっくりと見て、評判がいいようならば買うといい”とアドバイスしました。彼女、大の肉好きで。毎日のように『いきなり!ステーキ』に行列しては食べていた。
それで彼女は500円前後でペッパーフードサービス(いきなり!〜の運営会社)の株を買ったところ、半年ほどで7500円を突破しました。なんと15倍、売却したとしたらとんでもない利益です」
自分が好きなレストランなら毎日のように行くし、その商品に詳しくなる。世間の評判にも自然と敏感になる。そんなサービスや商品を選ぶことこそが、株式投資を成功させるコツなんだそう。
また「株は自己責任。すすめられても言われるままに買わず、必ず自分で調べること」とも話す。
ちなみに、金融商品ではないが、注目しているのが高級熟成ワインを保持する“ワイン投資”。
「日本ではワイン投資はまだまだ発展途上ですが、ヨーロッパでは古くから行われている投資方法。例えば、誰もが一度は耳にしたことがあるロマネ・コンティの40年前の価格は5万円ほどでしたが、現在は安いヴィンテージでも当時の10倍以上になっています」
飲まれるごとに在庫がどんどん減っていくため、価値がいっそう高まる。それにワイン投資は株などの金融資産の価格変動の影響を受けにくいため、分散投資先としても適している。さすがベテラン投資家、抜け目ナシ!
取材・文/千羽ひとみ