路線バスの旅で徳光和夫さんと名コンビに
テレビでは人懐っこい笑顔で親しまれ、人気者の田中だったが、20代のときは明確な目標がなく、「もう引退しようかな」と悩むことも少なくなかったという。
「俳優業を中心にやりたかったのですが、『王様のブランチ』のMCをきっかけにバラエティー番組の仕事が増えていきました。求められる仕事を一生懸命やってきましたが、自分が本当にやりたいことは何なのだろうと考えてしまって」
そんな田中にとって大きな転機となったのが、結婚と出産だった。お相手はカメラマンで、田中が一目惚れし、猛アタックした末のゴールインだった。
「出産で芸能界引退も考えたのですが、出演していた番組のプロデューサーさんが『待ってるよ』と声をかけてくださり、求められたことがすごくうれしかったんです。産後1か月でCM撮影も行いました。そのときから引退は考えなくなり、あらためて『この仕事で頑張っていこう』と思いました」
たくさんのドラマやバラエティー番組に出演してきたが、最近では、徳光和夫さんとゲストとともに各地の旅をする『路線バスで寄り道の旅』でおなじみだ。行く先々での天衣無縫な徳光さんのふるまいを田中がうまくコントロールし、見ていて安心感のある番組になっているのも人気の理由だ。
「この番組がスタートして10年以上になりますが、本当に旅をしているように一日中、食べたり、飲んだりしてロケをしているので、楽しいんですよ」と田中は言う。
同番組の当初のエピソードを、田中の魅力をふまえて徳光さんは次のように話す。
「最初は番組内で特定のパートナーは決まっていませんでした。でも律ちゃんと初めて共演したときに、芸能人の仕事としての愛想のよさではなくて、人間としてちゃんと目配り、気配りができている女性だったので、これからも一緒に番組を作っていきたいと思いました。プロデューサーは僕以上にそう感じていたようです」
番組を続けるうちにスタッフが田中の大ファンになるのを身近で見てきた。
「打ち上げのときに出演者ではなくスタッフとしてそこにいる感じで、スタッフが打ち解けやすいんです。人の話をよく聞いてくれるし、みんなから慕われています。芸能界で生き残っていくためにいろんな計算に走る人もいますが、彼女にはそれがない。本当に自然体なんです。だから共演者ともすぐに仲よくなれる。僕なんか律ちゃんの手のひらの上で転がされて番組を続けられているようなもんです」(徳光さん)
長年ヘアメイクを担当する佐々木育美さんも田中のファンのひとりだ。
「私たちスタッフにも気さくに接してくださり、テレビで見るままのとても優しい方。すっぴんのときに写真を撮られることも気にされないですし、撮影後にお出かけされるときでも、メイクを落として行かれるので初めはびっくりしました。でも、この飾らない感じが律子さんらしく、素敵だなといつも思います。お仕事もプライベートも楽しまれている律子さんは、憧れの存在です」