薬理作用を謳う美容液の使用

 加齢によるシミやたるみなど肌の悩みは尽きないが、美容整形はまだまだハードルが高い。わらにもすがる思いで使う美容液も、悲しいことに劇的な効果は証明できないようだ。

「シワが薄くなる、たるみをなくす、リフトアップをするなんていう美容液は意味がありません。特に予防ではなくシミを取るなどと理効果を謳うものは、医師なら使わないでしょう。

 たとえ1日に1滴塗布するもので、1日あたりにかかる金額は数百円というものでも、20ccだと数万円になる。高価なものでも、金額に見合ったエビデンスはありません」

 表皮は体表面(外界と接している部分)から順に、「角質層」「顆粒層」「有棘(ゆうきょく)層」「基底層」と呼ばれる層に分けることができる。爪や毛髪同様、生命反応を完全に失ってしまった部分(切っても痛くもかゆくもない部分)が「角質」。

 機法では、化粧品が角質層より奥まで浸透すると謳うことを禁じていることからもわかるとおり、角質層より奥に成分を届け、肌の引き締めやたるみを改善するためには医療技術を用いる必要があるのが現状だ。

食品を使ったスキンケア

 ヨーグルトパックで美肌になる、きゅうりパックで目元のむくみを取るなど食品を使ったスキンケアは古くから行われてきた。口に入れてもよい食品を使ったスキンケアは、添加物もなく安心な気がするが……。

「私が皮膚科に勤務していたとき、米ぬかや米麹、ヨーグルトやはちみつパック、ヘチマやアロエなど食品を使ったスキンケアで、肌トラブルになった方がわんさか訪れた。食べられるものだから肌に良いというのは大間違いです」

 オリーブオイルクレンジングなど食品成分が含まれた化粧品は不純物を除去して精製しているが、食品をそのまま肌に塗ると刺激になることが多い。

 前述のきゅうりにはソラレンという物質が含まれており、塗ったまま紫外線を浴びるとシミの原因になってしまう。

 さらに10年ほど前に健康被害が多発した“茶のしずく石鹸”では、製品に含有された小麦由来のタンパク質を肌から吸収し、もともとアレルギーのなかった人まで小麦アレルギーを発症した。このように食べ物を使ったスキンケアは食品アレルギーや重篤なアナフィラキシーショックを起こす危険もある。

北條元治先生●東海大学医学部非常勤講師、医学博士。信州大学医学部付属病院勤務を経て、ペンシルベニア大学医学部で培養皮膚を研究。2004年、細胞保管や再生医療技術支援を行う株式会社セルバンク設立。翌年には肌の再生医療専門のRDクリニック開設に際し、培養皮膚の特許を供与。現在も再生医療の普及に従事している。
北條元治先生●東海大学医学部非常勤講師、医学博士。信州大学医学部付属病院勤務を経て、ペンシルベニア大学医学部で培養皮膚を研究。2004年、細胞保管や再生医療技術支援を行う株式会社セルバンク設立。翌年には肌の再生医療専門のRDクリニック開設に際し、培養皮膚の特許を供与。現在も再生医療の普及に従事している。

北條元治先生●東海大学医学部非常勤講師、医学博士。信州大学医学部付属病院勤務を経て、ペンシルベニア大学医学部で培養皮膚を研究。2004年、細胞保管や再生医療技術支援を行う株式会社セルバンク設立。翌年には肌の再生医療専門のRDクリニック開設に際し、培養皮膚の特許を供与。現在も再生医療の普及に従事している。