突然の逮捕・勾留で変わった人生
日本の女性のセックス観の変遷を綴った『アンアンのセックスできれいになれた?』や、女性犯罪者のルポルタージュ『毒婦。木嶋佳苗100日裁判傍聴記』を発表するなど作家としての活動も始め、フェミニストとして発言をする機会が多くなっていた北原の身に2014年、ショップに陳列されていた女性器をモチーフにした作品がわいせつであるとされ、わいせつ物公然陳列罪で逮捕される衝撃的な出来事が起きた。北原は留置場に勾留され、その後、略式起訴されて罰金30万円の略式命令が出た。
「このことで人生変わったと思います。自分のことが全然書けなくなって、単著を出せなくなってしまったくらいですから……。でも今年、初めて事件のことを振り返って、記憶が消えているところの埋め合わせパズルのような作業をしているんです。10年かかってようやく話せるかな、書けるかなと思っています」
自分の思いとは違う思惑に巻き込まれ、逮捕にまで至ってしまった当時の出来事について、北原は「すごく怖かった」と心情を吐露する。そのときに離れていった人たちもたくさんいたという。しかし離れなかった人もいる。それが信田だった。「離れる理由がないじゃないですか。悪いことをして捕まったわけじゃないし、逮捕するほうが悪い。北原さんは当然のことをやっていただけ」と話す。
「みんなで勇気づけの会とかやったけど、当時は憔悴していましたね。木嶋佳苗(死刑囚)の呪いなんじゃないか、と話したりね……拘置所の中から呪いをかけれるのは怖いね、とか言ったりして」
北原が勾留されていたのとちょうど同じころ、 闘病していた大原の祖母の容体が悪化。もしかしたら死ぬ前に会えなくなるかもしれないという苦しみもあったという。
「私、12月3日に逮捕されて、祖母が死んだのは20日なんです。だから早く出たかったんです。早く出ないと、もう死んじゃうから、会えなくなるじゃんって……」
勾留は4日間だったため、幸い祖母の最期には間に合った。そのときのことを思い出すと、今も涙が出てくるという。
「そのときに『人は、戦ってる人を見たいんだな』と思ったんです。なんか私は戦ってる人と思われてるみたいで、『北原さんが戦わないの、意外だ』って言われたんだけど、悪いけど私、あんまりケンカしないんですよ。本当に戦うとかって、最終的なことだと思うんですよね。そして私に関係ない責任まで一緒に戦うことを求めないでほしいって思う。だって女でいるだけで、日々戦ってるわけなんで。無駄な戦い、したくないですよね?」