日本初の女性弁護士を伊藤沙莉が演じる朝ドラ『虎に翼』(NHK)や、長谷川博己が手段を選ばないダークな弁護士に扮する『アンチヒーロー』(TBS系)など、春ドラマは個性豊かな弁護士の活躍が目立つ。彼らドラマの弁護士は本職からはどう見られているのだろうか。そこで現役の弁護士にアンケートを敢行。がっかり&よかった弁護士ドラマを挙げてもらった。同時に全国の女性500人に聞いたランキングも発表! プロの目との違いは、はたして……?
がっかり弁護士ドラマ
がっかり部門では『元彼の遺言状』('22年 フジテレビ系)と『SUITS/スーツ』('18年ほか フジテレビ系)に複数の票が入った。とはいえ、その理由は本職から見た違和感やリアリティーの欠如というものではなかったので関係者の方々はご安心を。
『元彼の遺言状』に関しては、「ミステリーという印象で弁護士ドラマというイメージはありませんでした。たしかに弁護士の業務として依頼を受けるところから始まりますが、謎解きに主眼が置かれているため弁護士ドラマとして見るとがっかりしてしまうかもしれません」(『弁護士法人ユア・エース』高村実さん)のコメントがすべてを表している。
一方、『SUITS』はオリジナルの海外ドラマ版とのクオリティーの差がこの結果に。「作品自体は面白かったのですが、アメリカ版のファンであるため期待値が高すぎ、がっかりする部分も……。ただ、鈴木保奈美さんは実際の大手事務所の女性パートナーの雰囲気とよく似ており、作り込まれた作品だなと感じました」(『法律事務所Z』今井陽祐さん)
これら専門家の意見に対し、ドラマウォッチャーの漫画家・カトリーヌあやこさんは、「ここでもやっぱり月9が入っちゃうんですね」とここ数年、あらゆるジャンルのがっかりランキングで上位を占める月9作品に苦笑い。
「たしかに『元彼の遺言状』はタイトルのエピソードがアガサ・クリスティの館モノっぽい感じだったし、まったく弁護士モノには思えなかった。『SUITS』は試み自体が無謀で、海外のリーガルドラマのカッコよさを日本で表現しようとしても無理ですよね。本家を意識したオーバーな芝居は見ているこっちが恥ずかしくなりました」(カトリーヌさん)
ほかには『うちの弁護士は手がかかる』('23年 フジテレビ系)、『リーガル・ハート~いのちの再建弁護士~』('19年 テレビ東京系)、『リーガルV~元弁護士・小鳥遊翔子~』('18年 テレビ朝日系)という作品が挙がった。
「『うちの弁護士〜』の平手友梨奈さんは、いくら天才でも仕事中にあの感じは弁護士としてどうなのかなと。パラリーガルさんは大事な相棒なので、みんなもっと大切にしていると思います」(『弁護士法人ユア・エース』武田礼子さん)、「『リーガルV』は個性的なキャラクターばかりでエンタメとしては面白かった。ただ、設定が現実味に欠け、没入しきれない部分はあった」(『法律事務所Z』小野寺俊平さん)
「『リーガルV』は現役ホストに元横領犯やストーカーのパラリーガルなど、こんな事務所があったら怖いっていう(笑)。本職の方にしたらありえない設定だと冷めてしまうのはわかります。私もドラマに出てくる漫画家の机にデッサン人形が置かれているのを見るたび、そんな漫画家いないからとツッコみますから。
『リーガル・ハート』はその逆で、モデルとなった弁護士さんのスゴさにドラマが追いついていないという意見があり、これにはちょっと驚きました。企業再生を専門とする村松謙一さんという弁護士がモデルで、反町隆史さんが演じていますが、内容自体はとても興味深い。企業再生という題材なのでTBSの日曜劇場でやればハマったかも。あれくらいハッタリかました演出のほうが絶対いい。テレ東にはちょっと荷が重かったのかもしれません」(カトリーヌさん)