目次
Page 1
ー 『美しく枯れる。』
Page 2
ー 『お義母さんは帰ってこない!』
Page 3
ー 「偽らざる姿でジジイになりたい」

「『週刊女性』なんて名前の雑誌に、『男性自身』みたいな名前の俺が出て大丈夫なの?」

 そう豪快に笑い飛ばすのは、玉袋筋太郎さんビートたけしに弟子入りし、お笑いコンビ「浅草キッド」として活躍。洒脱で気取らない性格から、「玉さん」「玉ちゃん」の愛称で親しまれる、昭和を感じさせる芸人だ。

『美しく枯れる。』

「気がついたら50代になっていてさ。人間、50年も生きているといろいろありますよ。50代を生きるって、とても大変で難しいよね」(玉さん、以下同)

 その言葉どおり、玉さんの50代は激動だ。52歳のときに、長年所属してきたオフィス北野(現・TAP)を辞めて、フリーの芸人として独立。相方である水道橋博士とは疎遠になった。プライベートでは、「俺に愛想を尽かして突然、妻が出ていった」と自戒を込めて告白し、認知症を患った母親は施設に居を移した。

「せがれ夫妻に子どもが生まれて、おじいちゃんにもなった。50代っていろいろなことが起こる。でも、トラックの荷台と一緒でさ、積み込みすぎるとよくないんだよね。過積載のまま運転したら事故が起きるでしょ。だから、起こった出来事を一つひとつ整理して、背負いすぎないようにしていくことも大事だと思うんだよね

 この3月、玉さんは50代に訪れた悲喜こもごもを吐露した美しく枯れる。(KADOKAWA)を上梓。「本の中で吐き出せたことで、自分自身、心の積み荷を軽くすることができた」。玉さん流の人生後半戦の歩き方ともいえる本書は、発売直後から共感の声が続出した。

「若いころのように、ギラギラし続けるなんてできないもん。身の丈を知るっていうか、老木には老木の美しさがある。加齢臭を蘭奢待のように味わいあるものにしたいよね。俺は年をとっていくことが悪いことだと思わないんですよ。最新のEVカーにはなれないけどさ、だったらこっちはクラシックカーになってやろうじゃないかって」

 老いていくことで生まれる“味わい”や“深さ”がある。劣化ではなく、経年変化を楽しむことが、美しく枯れていくために必要なことだと語る。

だって、俺の芸名は玉袋筋太郎ですよ。師匠(ビートたけし)からいただいた名誉な芸名だけど、若いときは、“玉袋筋太郎になっていかなきゃいけない”って気負いもあった。もし違う芸名だったら、好き勝手に酒を飲んだり、競輪をやったりしていなかったかもしれないんだから(笑)」

 だが、50歳を超え、「それなりにこの芸名に見合う生き方ができているんじゃないか」、そう思えるようになったという。

「だったら、頑張りすぎなくてもいいじゃんって。ゆっくり枯れていくような人生の後半戦を楽しみたい。中には、ビッグモーターじゃないけど、除草剤をまかれて枯れちゃう人もいるんだからさ。自分が好きなことや大切にしていることを考えたいよね」