補聴器や鍼灸治療で改善する可能性も

 では具体的にはどんなケアをすればいいのか。

難聴が原因の耳鳴りは、補聴器を使うことで軽減することがあります。補聴器で必要な音を十分聞き取れるように調整することで脳の過敏性が軽減され、耳鳴りが改善するのです。

 耳鳴り専用の補聴器もあり、おすすめしていますが、メガネに比べて抵抗を感じる人が多いですね」

 さらに、十分な効果が期待できる補聴器は価格が10万円以上するため、なかなか手が出せない人も。ほかに効果が期待できるのが鍼灸(しんきゅう)。

「皮膚は交感神経の支配を受けており、交感神経は圧の変化で血流や発汗を調整しています。経絡(けいらく・ツボ)への鍼灸により皮膚の下に微細な圧がかかると、血管が拡張され血液の循環がアップ。その結果、身体の緊張と脳の疲れが癒され、耳鳴りが緩和するのです

 また、手軽にできる対策として自律神経を整える効果が期待できる「耳ねじり」や「ホワイトノイズを聴くこと」もおすすめ。

 人生や生活の質の低下を招かないためにも、早めの対策を講じよう。

耳鳴りをラクにするお手軽ケア

難聴の有無にかかわらず、ストレス・睡眠不足・疲れは耳鳴りを悪化させてしまう。生活習慣の見直しとともに、以下に紹介する自律神経を整えるケアを取り入れてみよう。

お手軽ケア(1):耳ねじり

 耳には、自律神経に関連するツボや筋膜が集中。引っ張ったりねじったりすることで、自律神経に刺激を与えてバランスを整える効果が。

 両耳の上部を、親指が後ろ、人さし指が前にくるようにして手でつまみ、斜め上に引っ張りながら、後ろに倒すように手のひらを返して耳をねじる。そのまま、耳を後ろ、下へと順に引っ張る。つまむ位置を変え、耳の真ん中、耳たぶも同様に行う。

お手軽ケア(2):ホワイトノイズを聴いて寝る

 滝の音などの「ホワイトノイズ」は、すべての周波数を均等に含む音なので、耳障りな音をかき消してくれる。リラックスや安眠効果も。

 寝る前にスピーカーやスマートフォンをベッドの足元に置き、まわりの人に迷惑がかからないぐらいの音量で滝の音を流す。滝の音は環境音アプリなどで入手できるので、それをリピートしてずっと流しておくと、安眠効果もアップ。イヤホンを使うのはNG。

石井正則先生●JCHO東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科診療部長、医学博士。日本耳鼻咽喉科学会代議員、宇宙航空研究開発機構(JAXA)・宇宙医学審査会委員。
石井正則先生●JCHO東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科診療部長、医学博士。日本耳鼻咽喉科学会代議員、宇宙航空研究開発機構(JAXA)・宇宙医学審査会委員。

教えてくれたのは……石井正則先生●JCHO東京新宿メディカルセンター耳鼻咽喉科診療部長、医学博士。日本耳鼻咽喉科学会代議員、宇宙航空研究開発機構(JAXA)・宇宙医学審査会委員。著書に『70歳から難聴・耳鳴り・認知症を防ぐ対処法』(さくら舎)など。

石井先生の著書『70歳から難聴・耳鳴り・認知症を防ぐ対処法』(さくら舎)※画像をクリックするとAmazonの商品ページにジャンプします

取材・文/當間優子