「常に水のようにいたい」
自分以上に秀吉がハマる役者はいない。そんな自負もあるのでは?
「そんな……ないですよ。役者は周囲の人が好き勝手に決める仕事だと思います。香川照之くんが『利家とまつ~加賀百万石物語~』('02年)で秀吉をやるときに“竹中さんの【心配御無用!】を使わせてください”とわざわざ電話をくれたときはとてもうれしかった。『どうする家康』('23年)でのムロツヨシくんも“どんな秀吉を演じるんだろう?”って気になって見てみると“なんと! めちゃくちゃ嫌な秀吉をやってるじゃん!”ってびっくり(笑)」
とはいえ、やはり秀吉には特別な思いがあり、縁をすごく感じると語る。シンプルに、豊臣秀吉をどんな人物と捉えているのだろう?
「僕は捉えないんですよ。結局、役を見るのは監督。最終的には観客。 役者はただセリフを言えばいい。どの現場でも、監督の望んでるものにどれだけ近づけるか。それだけです。役のことって本当に考えないんです。僕は“役者が役作りをしたらおしまいだろ”と思っています。固まってしまうからね。常に水のようにいたいです。監督の思いに従って動ける役者でいたいです」
竹中が初めて秀吉を演じたのは、先述の『秀吉』。39歳だった。
「プロデューサーの西村与志木さんが、上司の猛反対を押し切ってキャスティングしてくださった」
竹中の“心配御無用!”は流行語となり、平均視聴率30.5%をたたき出した。平成以降の大河ドラマでは最高の数字だ。
「西村さんは“相当マニアックな大河になるかも”って言ってたのに、 視聴率を取っちゃった(笑)。懐かしいな……。そして、急にみんなが優しくなった(笑)。“よく知らない変なお笑いの人”みたいな感じだったのが、“この人、お芝居とかできるんだ”って。確実に転機と言わざるを得ないですね。世の中に認められた作品です」
秀吉に限らず、竹中は数多くの戦国武将を演じている。加藤清正、石田光成、織田信長、徳川家康……。
「でも、よく見られた作品の人物のイメージになりますからね。“金沢百万石まつり”('22年)の百万石行列に前田利家役で参加したときも、観客のひとりから“秀吉~!”と呼ばれて、“いやぁ~利家でぇーす!”と手を振りました(笑)」