「月1万円程度の食費があれば大丈夫。こんなに美味しくて健康的な食生活が送れるということを、もっと多くの人に知ってほしい」
そうハツラツとした笑顔で話すのは、おひとり様の年金暮らしを発信している人気ブロガーの紫苑さん、73歳。シングルマザーとして2人の子どもを育て上げたあと、64歳で都市近郊に中古住宅を購入して暮らす。
ここ数年は物価高騰による煽(あお)りを感じながらも、安くて栄養価の高い食材を上手に選び、工夫を凝らした自炊をすることで月1万~1万3000円の食費をキープ。
ブログでは、彩り豊かな食卓の様子を中心に、月5万円の年金だけとは思えない自由で健やかな毎日をつづり、多くの人が抱える老後の不安に対する一筋の光となっている。
しかし、そんな彼女もしっかりと準備をして年金生活をスタートしたわけではない。コロナ禍で仕事がなくなり、思いがけず収入が年金だけに。
月に2万~3万円の予算があった食費は、半分から3分の1ほどにサイズダウンすることを迫られた。突如として“節約しなければ生活が破綻する”という切羽詰まった状態に放り込まれたのだ。
肝は食材選びと自炊!1万円でも豊かな日々
「それでも、安いからといってキャベツやもやしばかりをガマンして食べ続けるような食生活にはしたくありませんでした。無理なく、楽しんで食べられる節約料理でないと続かないと考えたからです。だって、年金生活はこの先も長いわけですから」
4日に1度の買い物で使える予算は1500円程度。それを守りながら満足のいく食卓にするために、旬の野菜や鶏むね肉、イワシといった低価格&高栄養の食材を選ぶことを重視した。
「豆腐や卵を合わせても予算内。それで十分、滋味豊かな食事ができるとわかると毎日の食事が楽しくなりました。お金がなくて食べたいものが食べられないといったガマンを感じることはないです」
また、買った食材を無駄にしないことにも尽力。肉や魚は買ったその日に塩麹に漬け、葉物野菜などはさっとゆでて使いやすい大きさに切って保存する。
「少し手間をかけておけば、美味しくいただける日数が延びますし、食材が使いやすくなるので忙しい時でもパパッと自炊できます」