“かかと落とし”が骨密度を高める!

 閉経後に急激に低下する骨密度は、年齢を重ねるごとにどんどん減っていくのだが、実は“牛乳やヨーグルトでカルシウムを積極的にとる”だけでは、骨粗しょう症予防は不十分だという。

 そこでおすすめなのが、“かかと落とし”。つま先立ちになって上げたかかとをストンと落とすだけ、と簡単な運動の上、いつでもどこでも行えることから注目をされている。この単純な動作が、なぜ骨にいいの?

「実は骨には、何かしらの刺激を察知すると、骨を丈夫にするシステムが備わっています。“かかと落とし”によって得られるかかとへの衝撃が、骨をつくる骨芽細胞を活性化させることで、全身の骨密度をアップすることにつながるのです」

 宇宙飛行士の骨にまつわる話は有名だ。

 長時間無重力状態に身を置く彼らは、骨に負荷がかからないため、急激に骨密度が低下する。骨は怠けてどんどんもろくなってしまうので、帰還した直後は自分の体重を支え切れず、立つこともままならないという。

 ただ、なりふり構わず刺激するのは逆効果だそう。

「“かかと落とし”の注意点は、無理をしないこと。健康のために運動したのに、無理をしたせいで転倒して骨折したということになれば、元も子もありませんから。また“かかと落とし”だけで骨粗しょう症を防ぐことは当然、難しい。

 カルシウム、ビタミンD、ビタミンKを意識したバランスの良い食事や、1日30分程度の日光浴など、骨の強化につながる生活を意識することが大切です」

 “かかと落とし”は、20回1セットを1日に1~3セット程度行えばOK。家事の合間や、朝起きた際の日常生活に、かかとの上げ下げを習慣化すれば、骨粗しょう症への進行を遅らせることができる。

「“かかと落とし”に限らず、あらゆる運動は、骨だけではなく、心臓や肺などの機能向上や認知症予防にも効果的です」

 もう一つ、骨粗しょう症対策として寺内先生が強くすすめるのが、“骨の検診”だ。

薬物療法も充実し始め、今や骨粗しょう症は治せる病気です。ただ、そのために大切なのが早期発見。今は、40歳以上の女性を対象に骨密度検診を実施している自治体も多いので、ぜひホームページなどをチェックして足を運んでみてください」

 10年後も20年後も丈夫な骨で過ごすため、複数の対策を組み合わせた合わせワザで骨粗しょう症対策を始めよう。

寺内公一先生●東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科・茨城県地域産婦人科学講座にて教授を務める。専門は、更年期障害や骨粗しょう症。
寺内公一先生●東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科・茨城県地域産婦人科学講座にて教授を務める。専門は、更年期障害や骨粗しょう症。

教えてくれた人……寺内公一先生●東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科・茨城県地域産婦人科学講座にて教授を務める。専門は、更年期障害や骨粗しょう症。


取材・文/後藤友美(ファイバーネット)