「完全リタイアとなる70歳以降は約35万円の公的年金で生活費を賄い、1500万円から2000万円超の私的年金で冠婚葬祭や入院費などの特別費をカバーするイメージです。
退職金がなかった場合でも私的年金約1500万円を確保でき、これを引き続き年利回り3%で運用すれば月6万円ずつ取り崩した場合でも100歳時点で188万円残ります。長生きしても困らず安泰というわけです」
負のマインドは封印
あくまでシミュレーションのため、絵空事と見る人もいるかもしれない。だが働き方の条件も運用の数字も、不可能な設定ではないことがわかるだろう。つまり、60歳貯蓄ゼロから10年で安心の老後資金を築くのは可能なのだ。
「どこかに資産が眠っていないか最初に確認することも忘れずに。よくあるのが、個人年金保険など貯蓄型の保険をかけながら、満期金の存在を忘れているケースです。
また、家にある不用品をメルカリなどで売れば、お金に換えられます。断捨離を兼ねて挑戦し、高値になったら一石二鳥ですよね」
いざ老後資金づくりに挑むとなると、「もう遅い」「いまさら」などの気持ちに陥りがち。
「そういった負のマインドは封印しましょう。諦めずに、行動を起こすことが大切」
そして60歳から70歳までの期間は節約を心がけ、生活をダウンサイズすることが重要になる。この間に浪費生活を送ってしまうと、老後資金を貯めて増やすことが叶わなくなるのはいうまでもない。
「同時に健康第一でいることが何より大切です。健康だからこそ働けて、蓄えも築けるわけですからね」
教えてくれたのは……塚越菜々子さん●税理士事務所に15年勤務後、2017年にファイナンシャルプランナーとして独立。これまで約2800人の家計や資産運用のサポートを行う。近著に『「扶養の壁」に悩む人が働き損にならないための38のヒント』(東京ニュース通信社)。
取材・文/百瀬康司