疲れやすい、眠りが浅い、夜中に目が覚めてしまう、動悸(どうき)がする、体重が増えた──。いずれの症状も更年期の年代なら「更年期症状」と片づけてしまいがちで、翻訳家でエッセイストの村井理子さんもそのひとりだった。
「あまりにも体調が悪くなって病院で診てもらったところ『心臓弁膜症』と診断されました。当時の私は、まさに死にかけの状態でした」(村井さん、以下同)
初めに感じたのは疲れやすさだったという。
「午前中に活動をすると、午後は疲れてぐったりしていました。もともと不眠ぎみだったのですが、夜中に目が覚めることが多くなりました」
心臓が止まりかけ重病人になっていた
同じころから息苦しさを覚えるようになった。
「振り返ってみると、夜中に目覚めるのは、呼吸が苦しかったせいだと思います。枕を高くしても息苦しさが続くので、ソファに座って寝るようになりました。後に担当の先生に聞いたところによると、『胸水がたまっていて、普通に暮らしながら溺れているような状態』だったそうです」
村井さんが特に気になっていたのは、体重の増加とむくみだった。
「身体全体がむくんで靴も帽子もサイズを上げないと入らなくなってしまいました。いつの間にか体重が10キロ近く増えていたものの、まさかそれがむくみによる水分のせいだとは思わず、ただ年のせいだと思っていました。 実際、当時の私の不調は、インターネットで検索した更年期症状にほとんど当てはまっていたんです」
体調不良が続く中、村井さんは小学生の双子の息子たちと夫のために奔走し、仕事にも懸命に取り組む日々を送っていた。しかし、47歳のある日、ついに心臓が悲鳴を上げた。
「耐えられないほど体調が悪くなり、近くの大きめの病院で診てもらったところ、心臓に問題があると言われ、翌日、総合病院の循環器科で診察を受けました。
その結果、“僧帽弁閉鎖不全症(そうぼうべんへいさふぜんしょう)”という心臓の弁の病気で、それによる心不全の状態であることが判明しました」