「大阪府が実施している路上喫煙対策には、屋外分煙所のモデル整備事業がございます。令和元年9月に、『「屋外分煙所」整備の基本的な考え方』を取りまとめ、市町村や民間事業者さまが屋外の喫煙所を新設、改修する際に、考え方に基づきモデル整備を進めるようコーディネートを行います。

 大阪市の喫煙所整備施策について、大阪府が直接関わることはございませんが、モデル事例の共有やPRを通じて、支援を実現していきたいと考えております。また、民間事業者さまから大阪府の方に、大阪市に喫煙所設置の相談等があった際に、内容を確認し、大阪市の担当者にお繋ぎしております」

 つまるところ、大阪府が直接的に喫煙所の数を増やすことはないという。では、吉村知事が朝倉と交わした約束は実現不可能だということか。

「来年1月からの大阪市内の路上喫煙全面禁止と、4月からの大阪府の受動喫煙防止条例の全面施行により、喫煙者の方が外出時にたばこを吸える場所がかなり制限されることが予想されます。そこをフォローすべく、大阪市と大阪府でそれぞれの役割をもって、喫煙所を増やしていくというのが知事の発言の意図であったと思われます」(大阪府健康医療部健康推進室健康づくり課担当者)

 担当者が語ったように、大阪府では来年4月より『大阪府受動喫煙防止条例』が全面施行される。これにより、経過措置の適用で喫煙可能となっている飲食店のうち、客席面積が30平米以下でない飲食店では全面禁煙に。これは、国が定めた健康増進法よりも厳しい基準であり、多くの飲食店で喫煙が制限されることとなる。

外国人からも、吸う場所が「足りない」「わかりづらい」

 “足りない”という声があがり続けている喫煙所の整備と、着々と進む喫煙者への制限。もちろん路上喫煙が問題であり、吸わない人の健康を守ることは大事だが、身近に吸える環境がないことは喫煙者にとって大きな悩みの種で、それが路上喫煙を引き起こしている側面は否めないだろう。

 日本の都市部の喫煙所の少なさとわかりにくさは外国人観光客にも不評なのだという。訪日旅行情報サイト『地球の歩き方GOOD LUCK TRIP』が昨年6月に発表した調査では、「日本旅行中に困ったこと」として外国人観光客の回答者の14.4%が「喫煙できる場所の少なさ・わかりにくさ」を挙げている。

 万博開催を機に海外からの観光客増加を見込み、きれいな街づくりを目指し始まった大阪市と大阪府の喫煙対策。だが、肝心の大阪・関西万博の会場には、場外に1か所しか喫煙所は設置されない予定。喫煙の制限の一方、喫煙所の整備が追いつかない状況では、外国人含めて「喫煙所難民」とポイ捨てを増やし、旅の思い出にも水を差してしまうことになりかねない。