最後は、片づけによって今後の親の生活の質を上げられること。室内を歩きやすいように家具の配置をかえたり、高いところに物を置かないようにすることで事前にケガを防ぐこともできる。
「家の外まわりの片づけは空き巣などの抑止になります。親が安全で元気に過ごせる空間をつくることは、いちばんの親孝行。さまざまなトラブル回避につながるので、子どもにとっても安心です」
親子だからこそ、優しい言葉で片づけを促すべし
とはいえ、一筋縄ではいかないのが“実家片づけ”。石阪さんは、自分の家の片づけと違い、“親子だからこその難しさ”があると指摘する。
「いざ片づけようと思っても、“親が話を聞いてくれない”という相談は非常に多い。帰省して久しぶりに会う親と無駄にもめるのが嫌だから諦めたという悩みもよく聞きます」
石阪さん自身も“片づけなんて必要ない”という父親と対峙(たいじ)し、心が折れそうになった経験を持つ。
「母の介護が始まり、必要に駆られて実家の片づけを始めようと父に提案しましたが、まったく聞く耳を持ってくれませんでした。介護ベッドを入れる空間をつくるため、大きな家具を処分したいと言っても“もったいない”の一点張り。
娘の言うことだから少しは話を聞いてくれるだろうと高を括(くく)っていましたが、むしろ逆!娘だから聞いてくれないのだとわかりました」
いつまでたっても親は親、子は子。たとえ親自身が片づけの必要性を感じていたとしても“子どもに言われたくない”というプライドが枷になるのだ。
さらに、きょうだい、同居世帯も多かった親世代のほとんどが“実家の片づけ”と無縁だったことも簡単に理解してもらえない理由だ。スムーズに進めるためには“親の側に立つマインド”が必須だと石阪さんは語る。
「物であふれすぎていると、つい“捨てて!”と言いたくなりますが、そこはグッとこらえて。“最近、友達のお母さんが家の中でつまずいて骨折したから、私も心配。少し整頓してもいい?”といった優しい声かけにするとうまくいきます。
“どうせ使わないでしょ”ではなく、“今、結構な値で売れるらしいよ”など親が手放すことにメリットを感じるような提案に変換するのも手。いつまでも元気で楽しく長生きしてほしい、そのための片づけなんだよ、というメッセージを伝えながら行うことが大切です」