30代より60代のほうが元気
腸にいい生活はその後も継続している。
「私は腸が弱いっていうのがわかっているので、過食は控えて、バランスよくいろいろ食べつつ、ヨーグルトなどの発酵食品や野菜、フルーツは積極的に食べて、水分もよくとるようにしています」
ムリなく腸活を続けるためには常備菜がおすすめ、と重野さん。
「毎日作るのは大変なので、まとめて作ってストックしておくんです。それをちょっとずつアレンジして取り入れると継続しやすいです」
軽い運動も習慣化したそう。
「運動は大嫌いでまったくやってこなかったんですが、再発予防に効果があるというので、犬を飼い始めて一緒に散歩や山登りに行くようになりました。それまでは体力がなくて呼吸が浅かったのが、みるみる改善していくのを実感しました」
生き方にも変化があった。
「嫌な人との付き合いや嫌いなことはしなくなりましたね。闘病でただでさえ大きなストレスを抱えていたので、ストレスになることは避けたかったんです。身体の回復を最優先にして、わがままでよし、としました」
好きな人やモノ、時間に囲まれて過ごすことは、闘病中は特に大切だったと語る。代わりに、自分が役に立てることや情熱が注げることであれば、精いっぱいやるべきと考えるようになったそう。
「腸の健康や術後の食事の勉強を20年ほどやってきて、その間、大腸専門の先生方のお話もたくさん伺いました。腸と病には関連があることがわかっているので、自分の得た経験や知識はこれからもシェアしていきたいです」
がんから約25年、好きなことを仕事に、現在も健康な日々を過ごしている。
「10年で“大腸がんから卒業”と言われましたが、再発も転移もなく現在に至ります。年齢的に衰えてきているところはもちろんありますが、30代のころより今のほうが心も身体も元気なくらい(笑)。今後は犬の腸活についてもお伝えしていけたらと思います」
新たな挑戦も、健康な心身があってこそ。
重野流 腸活常備菜
さつまいもと切り昆布の煮物
レジスタントスターチの多いさつまいもと水溶性食物繊維の多い昆布を一緒にとります。冷たいまま食べるとさらに腸活力アップ。
きゃべつとにんじんのサラダ
きゃべつとにんじんのせん切りを塩とアップルビネガーでもんで保存し、だんだん発酵するサラダ。オリーブオイルとこしょうをかけたり、白だしをプラスして漬物風にしたり、マヨネーズであえたりとバリエーション豊富。
おからのグラノーラ
オートミールとおから、ドライフルーツで作った不溶性食物繊維と発酵性食物繊維たっぷりな腸活アイテム。必ずフルーツとプレーンヨーグルトと一緒にとり、食物繊維と乳酸菌を一緒に食べるよう心がけている。
重野佐和子さん●20代でフランス料理研究家となり、料理教室やフードビジネスに携わる。がんの治療後は、自身の体験をもとに術後の食事を研究し、腸活料理研究家として活動。著書に『大腸がん手術後の100日レシピ』など。
取材・文/荒木睦美