折り合いをつけるため価値観のすり合わせを
配偶者と生涯をともにするため、夫婦が大切にすべきことはなんだろうか。
「こうあるべきとか、『自分の普通』を相手に押しつけていないか、お互いに顧みて話し合いをすること。モラハラをしてしまうのは、コミュニケーションがとれていないことも一因です。もし妻が関係改善を望むのであれば、何が不満なのかを言葉で伝え、夫婦間でルールを作ってみてはどうでしょうか」(寺門さん)
寺門さんの夫へのアドバイスは、令和の多様性の時代についていけるよう、価値観のアップデートをすることだ。
「例えば定年後の男性は、社会との関わりを維持し、さまざまな価値観に触れてみて。妻源病の男性は趣味がないという方が多いので、ストレス解消につながる生きがいを見つけることも大事です。また、悩みを話せる人を見つけましょう。会社や家庭以外の人間関係があると、自分たちの夫婦関係がいびつであることにも気づきやすいはず。それでも夫婦間での改善が難しければ、カウンセラーや医療機関、弁護士といった専門家のサポートを受けることも考えましょう」(寺門さん)
妻源病の状態が続き、妻と一緒にいることが苦痛であれば、別居や離婚も視野に入れるべきと2人は口をそろえる。
「夫の不調が自分のせいと思っていない妻の場合、離婚の合意を得られずに協議が難航することが多いのが現実です。妻の不倫や身体的な暴力行為などがあれば、『婚姻を継続し難い重大な事由』と認められやすいのですが、精神的DVや経済的DVは証拠が残りにくい。離婚調停や裁判まで進み、解決までに時間がかかる可能性があります」(溝口さん)
経済的DVを受けていてもお小遣いが手渡しであれば、その金額を裏付ける証拠がない場合が多く、妻が「もっと多く渡していた」と主張すれば夫は不利だ。
「妻側は、離婚準備のために暴言を録音したり、証拠を残そうとしますが、夫側はなぜか積極的にしない傾向があります。なので離婚が頭をよぎったら、何かしら記録をつけるように、アドバイスします。精神科医にかかっている夫も多いですが、相当数の方が適応障害やうつ病と診断されていますね」(溝口さん)
裁判所が認める離婚根拠を集めるのは容易ではないため
「弁護士選びが肝に。調停や裁判の結果は交渉力や対応戦略に長けた弁護士と出会えるかどうかで大きく変わることも」と溝口さんは言う。
夫に嫌気が差してつらく当たっていたら、ある日、弁護士から離婚の連絡がきた─。取りかえしのつかない状況になる前に、いま一度、夫婦の関係性を見直してみては。
教えてくれたのは…
寺門美和子さん。夫婦問題コンサルタント、FP、女性自立支援サポートの3つを軸に、多様化する夫婦問題の解決を中心に幅広く活動。夫婦問題診断士協会代表理事として「Miwa Harmonic Office」を運営。
溝口矢さん。全国展開の専門型総合法律事務所・弁護士法人Z東京オフィス マネージャー弁護士。東京弁護士会所属。男女問題案件を多く手がけ、さまざまな分野に幅広く対応。男女間のトラブル対策セミナーの講師も務める。
<取材・文/オフィス三銃士>