そんな彼も、昔から“世界一明るい視覚障がい者”だったわけではない。

大学時代は、自分が世の中に必要とされていないような疎外感を覚えて2年間“ひきこもり”になりました。家族の支えもあって立ち直り、新卒で経営コンサルティング会社に入社したのですが、うつ状態で退職。挫折も味わいました。

 そうして自分と向き合い続けた今は、目が見えない人生にしょげるのではなく、自分で価値を見いだせるようになったんです。人生は“自分がどう意味づけするか”で大きく変わるんですよね」

人生の音程を整える“調律師”として

 そんな成澤さんの本業は、経営コンサルティング業。'09年に独立し、現在は妻と二人三脚でギター塗装の100年企業からお坊さんが経営する電力会社など、多種多様な業界の企業、約60社のコンサルタントを担っている。

視覚障がいのある実業家・成澤俊輔さん。結婚式にて
視覚障がいのある実業家・成澤俊輔さん。結婚式にて
【写真】白杖を手にパリコレのランウェイを歩く成澤俊輔さん

「自分の仕事は『経営者の調律師』と表現しています。経営者の多くは、資本主義や他者からの期待にがんじがらめになって、人生の“音程”が狂ってしまうときがあるんです。
 
 音程が狂ったときに僕との対話を通して自由な感覚を取り戻してもらう。僕は、どの会社に行っても異分子になるので“ちょっとしたざわつき”を感じてもらえる提案をします。

 例えば、その企業では当たり前の慣習に対して『無駄だからやめよう』と僕が提案するとみんな驚くんです。たとえそれが実現しなくても、社内で小さな“違和感”として残れば何かしら変化につながります。そんな気づきのチャンスを投げかけるのが、僕の仕事ですね