薬は一切飲まない 

ジムに行くなどあえて特別な取り組みは一切せずに庭に出て作業をするなど、自然に身体を動かすことを心がける中村さん
ジムに行くなどあえて特別な取り組みは一切せずに庭に出て作業をするなど、自然に身体を動かすことを心がける中村さん
【写真】「日々食べたいものを作って食べるだけ」中村さんの手作り献立

 制約が多かった時代の中でも、熱中できる仕事に就き、競争社会のストレスを抱えることもなく過ごしてきた中村さん。そうした心の健やかさは、身体の健康状態にも表れている。

「今も薬は一切飲んでいません。日常暮らしている限りでは、必要性を感じないので」
その根底にあるのは、「人間も生き物の一種。特別なものではない」という考え方だ。

「もちろん私も、視力や聴力など、加齢による機能の衰えや変化は感じていますよ。でも、これまでずっと働き続けてくれた身体ですから、少しずつ疲れてくるのは仕方ないと思っています。そもそも生き物はみな、生まれる、育つ、成熟する、老いる、死ぬという一生をたどるもの。それぞれの時期を楽しまないと損な気がするんです」

 老いることをネガティブに捉えず、常に今に向き合って生きる中村さんの暮らしは、シンプルでナチュラル。

「朝起きるとまず、家中の窓を開けて、空気を入れ替えるんです。冬は必要なところだけ開けてしばらくしたら閉めますが、夏はそのまま開けっぱなし。自然の風が通って気持ちいいので」

 豊かな緑に囲まれた高台に立つ家という環境のよさもあり、猛暑が続いた昨夏も、来客時以外はエアコンを使わずに過ごしたという。

「もちろん暑いとは感じますよ。でも、眉間にシワを寄せて我慢したわけではなく、家族みんなが、開けると風が気持ちいいねと言って暮らしています。そこで窓を閉めてエアコンをつけようという気持ちにならないんです」

 また、天気のいい日はほぼ毎朝、600平米ある庭の掃き掃除をすることで心地よく身体を動かしている。

「落ち葉は秋というイメージですが、実際には一年中葉っぱが落ちてくるので、必要不可欠な作業なんです。集めた落ち葉は階段下にある落ち葉だめへ。集めておくと自然に腐葉土になり、1年ほどたったものを下から取り出し、庭に戻します。庭がきれいになってすっきりするだけでなく、自然の循環を感じられるのも楽しいですね」