年金は実質的に減額で増える医療負担
庶民を苦しめる厳しい物価高。中でも大きな打撃を受けるのは年金生活者で、そこには深刻な問題が潜む。
「近年、高齢者の年金は減額されています。年金財政を立て直す政府の改革によるものです。ただ、多くの人は減らされていることに気づいていないのです」
重大な事実に気づかないのにはカラクリがある。
「年金受給額は物価や賃金の上昇に応じて増える仕組みなので、本来はこの物価高騰で年金も相当額増えるはず。ですが現実には、先述の減額政策によって正規の増加は望めません。しかし、前年度と比較すれば多少なりとも増えているため、本来もっともらえることが見えにくくなっているわけです」
年金の実質的な減額は長期継続される見込み。
「物価がどんどん高くなるのに対し、年金のほうは減っていくとなれば、生活は立ち行かなくなっていく。5年後、老後貧困に転落するケースは確実に増えていると思います」
病院での医療費も高齢者には懸念される。内閣府の予測によれば、2030年には3人に1人が高齢者に。医療費増大を食い止めるべく、今後、自己負担増は避けられないそうだ。
「医療費は年々膨らんでいるため、ある程度稼ぎのある高齢者の自己負担分が3割まで引き上げられるのは間違いありません。また、今年6月からの初診料・再診料の値上げや、来年8月からの高額療養費制度の自己負担限度額拡大が決まっており、重荷となってくるでしょう」
さらに医療費削減の国の取り組みが、サービス水準の低下を引き起こすことも。
「例えば、病院での手術の予約がとれにくくなったり、薬でいえば薬価の低いジェネリック医薬品が多用されたりするなど、人によっては不安を感じる対応が増えそうです」
医療だけではなく介護ニーズも、より高まることは必至。となれば、人手不足でサービスの質の低下も予想される。
そのほか、物価が上がれば金利も上がるため、住宅ローンを変動タイプで組んでいる場合は負担増を警戒しなければならない。また、金利上昇は国の借金(国債)の返済額を増やし、財政悪化につながる。結果、「消費税10%から15%への増税も考えられる」と加谷さんは指摘。そうなれば、家計は火の車だろう。