動画を見て気づいた間違ったケア
そんな負のループに転機をもたらしたのが、スマホで撮影をした1本の動画。コロナ禍にあった2021年3月、外出が制限される状況で、親戚におばあちゃんの様子を伝えようと録画したものだ。
「動画を見ておばあちゃんの困った言動に注意する私の口調が、すごくキツいことに気づいて。それが症状をより悪化させているのかもとハッとしたんです」(だんだん・えむさん、以下同)
それを機に夫婦で認知症関連の書籍を読むなど、ケアについて学び直すことに。主治医にも相談してわかったのは、認知症の症状のうち、記憶障害のように脳細胞が壊れることによって起こる「中核症状」は改善が難しいこと。一方、暴言や妄想、徘徊などの「周辺症状」は、優しく接するなど対応しだいで、緩和できる可能性があるということ。
「そこで私たちは、おばあちゃんを責めたり否定したりせず、感情的にならないように心がけました。すると、おばあちゃんもだんだんと穏やかになって、持ち前の笑顔が戻ってきたんです。また、カメラを向けるとイキイキと話してくれるのもわかって。せっかくならとYouTubeチャンネルを開設。私の対応を褒めてくださる方もいますが、結果的に自分がストレスを増やさないために優しく接しているんです」
ただ、「もっと早くこうしていれば、おばあちゃんに親子で怒鳴り合うようなことをさせずにすんだかもしれない」と後悔は残るという。