住人同士のトラブルは一般施設と変わらず

 超高級老人ホームで暮らすセレブたちは一見すると優雅に映るかもしれない。だが多様な人間が同じ屋根の下に住んでいれば、トラブルなしとはいかないもの。

「風呂場でシャワーがかかったともめたり、食堂の席を取り合ったりするなど、一般的な老人ホームと変わらないいざこざが起きています」

 超高級施設ならではという点では、居住者同士の色恋沙汰が多いそうだ。

「イベントやサークル活動が活発だからだと思います。会を通じて独り身の高齢男女が仲良くなり、恋愛に発展していく。超高級老人ホームは女性の居住者が多数を占め、夫に先立たれてから元気を取り戻すようです。男性は妻亡き後逆に元気を失うようですが」

 最後に、悪徳施設について教えてもらおう。

「ひと言でいうと、“偽装”がいたるところで見られました。例えば、法律で決められた介護職員の人員配置の基準人数を満たしていないのに、書類上の数をごまかしていたり。“偽装”や“演出”がさまざまな場所で見られました。自由度の高い施設を標榜しているにもかかわらず、居住者は敷地内を散歩することすらできない。衝撃の事実ばかりでしたね」

 甚野さんは超高級老人ホームを利益追求ビジネスの最たるものと指摘する。

「利益追求が悪いわけではありません。老人ホームは福祉施設です。超高級老人ホームの場合、肝心な福祉の部分が抜け落ち、利益追求だけに走りがちなのが問題であり、かつ福祉の充実を偽って演出している点で根は深い。私はそう思っています」

お話を伺ったのは──甚野博則さん

1973年生まれ。大手メーカーや出版社などを経て、2006年から『週刊文春』記者に。現在はフリーランスのノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌などで社会ニュースやルポルタージュなどの記事を執筆する。最新著書『ルポ 超高級老人ホーム』(ダイヤモンド社)が話題。

最新著書『ルポ 超高級老人ホーム』(ダイヤモンド社)

<取材・文/百瀬康司>