「手術のあと、摘出した臓器を先生が見せてくれたそうなんです。夫とは55歳のときに再婚したので、子どもを産んであげられなかった。それなのに突然、私の子宮や卵巣を見ることになって、『申し訳なかったね』と謝ったら、『子宮は赤ちゃんのベッドだから』と全然気にしていなくて。そのひと言で、術後の傷ついた心が癒されました」

 翌日には点滴が外れ、体力が落ちないよう階段を上り下りしてリハビリに励んだ。そのかいもあって手術からわずか4日後に退院。

「病院から外に出た瞬間、『私は生きている』と思いました。思わず太陽に向かってヨガのポーズをとりたくなって、『人間はこうやって生かされている』と、ありがたい気持ちになりました」

 それから半月もたたない5月中旬には復帰。短期の療養期間で、早期に仕事を再開できたのは、日頃から続けている身体づくりの賜物だ。

がんで他界した母と同じ年齢で病気に

手術から約半月でステージに復帰。ファンから「おかえりなさい」の温かい声援が送られた 写真/藤あや子さん提供
手術から約半月でステージに復帰。ファンから「おかえりなさい」の温かい声援が送られた 写真/藤あや子さん提供
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「ヨガはもう12年続けています。ヨガマットの上で、自分の身体と魂に向き合い、感謝をする時間が私には心地いいんです。58歳から始めたパーソナルのキックボクシングも6月には再開。50分間、パンチやキックを繰り返すのはかなりキツいですが、おかげで体幹が鍛えられています。以前と比べても、いい歌声が出るようになりました」

 現在、藤さんは63歳。偶然にも母親が他界した年齢と同じ年にがんが見つかった。

「母は原発不明がんでした。63歳で亡くなるのは少し早いけれど、当時は仕方ないと思っていたんです。でも同じ年になってわかりました。まだやりたいこともあって悔しかっただろうなと。がんが見つかったのは“私の分まで頑張るのよ”という母からのメッセージだと思います」

 母と違うのは、幸いにも「早期に見つかったこと」だと、藤さんは強調する。

「母は大の病院嫌いでした。健診も受けていなかったので見つかったときには手遅れで……。だから早期発見が大事。女性のみなさんには年1回のがん検診は必ず受けてもらいたい。子宮頸がんの検診のときに、子宮体がんも一緒に検査してもらうなど、先生に相談してみてください。いつもと違うと思ったらすぐ病院に行く。自分の身体にマメになりましょう」

 痛みや出血に慣れている女性は、小さな不調をそのままにしてしまうこともある。