スモーカーにやさしいホールが多く、トラブルは起きにくい

「パチンコホール分煙環境整備マニュアル」より。分煙方法がわかりやすくまとまっている
「パチンコホール分煙環境整備マニュアル」より。分煙方法がわかりやすくまとまっている
【写真】コロナ禍では飛沫防止対策としても導入が増えた分煙ボード

 その後、2020年の改正健康増進法の全面施行でパチンコホールは第2種施設に分類され、原則屋内禁煙になった。ただし、煙の流出を防止するための技術的基準を満たすことで、紙巻きたばこ/加熱式たばこを吸える喫煙室と、加熱式たばこ専用の喫煙エリアを設置することが可能に。経過措置として、加熱式たばこエリアでは遊技をしながら喫煙ができる。

 これに伴い、日本遊技関連事業協会では分煙ノウハウを持つJTの協力のもと、「パチンコホール分煙環境整備マニュアル」を作成。店舗向けに分煙環境づくりのガイドラインをまとめてホームページで公開し、各地でセミナーなどの啓発活動も行っている。

「パチンコホールは店舗構造や運営方針によって、喫煙室や加熱式たばこエリアを取り入れた分煙スタイルを選択できます。例えばワンフロアを壁で区切って、『喫煙室のある禁煙エリア+加熱式たばこエリア』や『禁煙エリア+喫煙室のある加熱式たばこエリア』にするスタイルなどがあります。多層階の場合は1階を禁煙フロア、2階を加熱式たばこフロアにするなど、『フロア分煙』している店舗も多いです。屋内全面禁煙でも敷地屋外に喫煙所を作る場合がほとんど。需要に合わせてホール内に複数の喫煙室を作る店が増えていきました」(福地さん)
 

加熱式たばこエリアと禁煙エリアの境界に壁面を造作(ぱちんこ大学 東久留米店)
加熱式たばこエリアと禁煙エリアの境界に壁面を造作(ぱちんこ大学 東久留米店)

 分煙対策で特に気を付けるべきことは何だろうか。パチンコホール企業の役員も務める福地さんはこう話す。

「今の世の中、スモーカーはどんどん肩身が狭くなっていますよね。だからこそ喫煙率の高いパチンコホールでは、ルールを守りつつ、スモーカーを大事に扱おうと気を配る店舗が多い。

 私のパチンコ店では喫煙所を広めに作ったり、屋外の喫煙室にエアコンを入れたりして、たばこを吸うことにストレスを感じにくい環境づくりを意識しています。ただ、広い郊外店と違って東京23区内のお店は空きスペースがほとんどないので、遊技台数を減らして喫煙所を作るケースが多く、収益にかかわるので店側にはかなりの負担ではありました」

広々とした喫煙室(ぱちんこ大学A館 久米川店)
広々とした喫煙室(ぱちんこ大学A館 久米川店)

 そのため、パチンコ業界関係者によると内装工事が不要な組み立て式でコンセント一つで設置できる分煙ブース(改正健康増進法の経過措置で認められている脱煙機能付き簡易喫煙ブース)を導入をしている店舗も多いという。

 環境整備に加えて、分煙を周知させることも大切だったという。

「法令の施行前から『2020年4月からホール内が原則禁煙になります』という認知促進用のポスターを作って掲示していたので、ルールを守るお客様が多く、目立ったトラブルは起きませんでした」(福地さん)

日本遊技関連事業協会が制作した店内掲示用ポスター
日本遊技関連事業協会が制作した店内掲示用ポスター

 パチンコ業界では「マナーの悪い客が多いホールは繁盛しない」と言われている。

「そのため、分煙ルールを守れていないお客様がいた場合はスタッフが声がけすることが多い。こまめな対応も功を奏しています」(パチンコ業界関係者)

 分煙が定着したパチンコホールだが、客からはどのような声が聞かれているのか。

「私の店では“空気がきれいになった”、“たばこのニオイがしなくなってよかった”というポジティブなお声をいただいています。コロナ禍と時期が重なったこともありますが、分煙が理由で客足が遠のいたという感覚はあまりありません」(福地さん)

 日本遊技関連事業協会の「2023年パチンコ・パチスロファンアンケート調査」では、「パチンコホールが原則店内禁煙になる以前と比べて『喫煙環境が理由』で遊ぶ頻度は変わったか」という質問に対して、「変わらない」が71.9%で最も高い結果に。また女性20代以下、女性60代では「禁煙になる前よりも多くなった」という回答が他の世代より高い傾向があり、女性客が入りやすくなった面もあるようだ。