病院にかかって治療などを受けた際に支払う医療費。それが高額になった場合でも患者の負担を抑えるために作られた「高額療養費制度」という制度がある。年齢や年収に応じて、ひと月あたりに払う医療費に上限が設けられているのだが、その制度がいま、揉めに揉めている。
毎月5万円近く出費が増える
厚生労働省は昨年末、高額療養費制度の上限額を来年8月から見直す方針を固めた。
これまでは医療費がたとえ月に100万円かかっても、たとえば年収650万円の現役世代なら上限額は月8万7000円ほどだったのが、政府案だと、最終的には月14万円近くになるというのだ。
国は社会の高齢化による医療費の増大が止まらないため必要な“値上げ”だと主張するが、患者団体は不当な引き上げで容認できないと、すぐさま厳重に抗議した。
「たまたま1回だけ医療費が高額になったのならまだいいですが、がんをはじめとした長期に渡る病気の場合は、毎月100万円の医療費が数年間続くことも珍しくありません。毎月5万円近く出費が増えるとなると、1年間で60万円ですからおおごとだと思います」(メディカルライターの長島渉氏、以下同)
2月10日、患者団体からの抗議を受けて国は昨年末にまとめた見直し案をさらに“見直す”とし、がんの患者団体と面会した。ところが、患者側は「(多少の見直しに)感謝はするが、それだけではとうてい受け入れられない。見直し案の凍結を求めていく」(全国がん患者団体連合会の天野慎介理事長)と述べた。
患者側から“凍結”を求められ、一筋縄では進まなさそうな政府案だが、ここにきて新たな“火種”が。
「このタイミングで一部報道で問題になったのが“長瀬効果”というもの。上限額を見直すとこの長瀬効果が生まれると厚労省は試算していたのですが、それが問題になっているのです」
“長瀬効果”とはいったいなんなのか――。