浅草寺などが所在する台東区では、区内に31か所の公衆喫煙所を設置。浅草周辺だけでも7か所の公衆喫煙所があるが、特徴的なのは区が整備した喫煙所の他に、民間業者が区の助成を活用して喫煙所を整備したり、既存の喫煙所を区の公衆喫煙所に指定したりと、行政が民間と協力して分煙対策を実施している点だ。

浅草寺などがある台東区の喫煙所(台東区提供)
浅草寺などがある台東区の喫煙所(台東区提供)

「台東区では区による喫煙所の整備も行っていますが、用地の確保などの問題があるので、民間事業者が公衆喫煙所を設置する際の設置費用や維持管理費の助成を行っています。民間企業の協力も得ながら喫煙所の整備を行うことで、分煙を図った環境づくりに取り組んでいます」(台東区環境課まちの美化担当者)

 台東区では、2023年に442万人もの外国人観光客が訪問。HPでは「日本語」「英語」「韓国語」「繁体字」「簡体字」「タイ語」の6か国語に対応した公衆喫煙所マップを掲載しているが、外国人観光客の増加とともにこのマップの周知を強化する必要性を感じているという。

「区内全域の路上喫煙禁止や喫煙エリアの指定、禁煙時間の指定など、東京23区は各区によって屋外の喫煙ルールが異なります。海外から来る方へは、細かい内容ではなく『喫煙の際は喫煙所の利用を』という呼びかけをしていますが、そのためにも喫煙所の周知は必須。喫煙等マナー指導員が巡回して喫煙所の誘導などに取り組むことによって、喫煙する人もしない人も、共存できる環境づくりに取り組んでいきます」(台東区環境課まちの美化担当者)

奈良公園内を路上喫煙禁止区域に指定も、喫煙トラブルが

奈良公園、春日野園地
奈良公園、春日野園地

 奈良市では、2009年より奈良公園の周辺などを「路上喫煙禁止地域」に指定。公園内には、若草山喜多ゲート横、大仏殿前駐車場、奈良公園バスターミナル西棟の3か所に喫煙所が整備されている。

 2023年には約184万5千人の訪日外国人が訪れたことを受け、禁煙や分煙をうながす英語と中国語を併記したピクトグラムによる看板も設置。しかし外国人旅行者への喫煙ルールの周知徹底は不十分のようで、路上喫煙や煙草のポイ捨てなどのトラブルも報道されている。

「公園内を路上喫煙禁止区域に指定した後も、喫煙の実態調査は行っていません。今後の具体的な対策は未定ですが、状況に応じて検討していきたいと思っています」(奈良県産業部観光局奈良公園室担当者)

 東大寺や興福寺、春日大社などを含む広大な敷地内での喫煙・分煙対策は、行政だけでは限界がある。この4月から大阪・関西万博が行われる関西圏では、世界各地からこれまで以上の観光客が訪れることが予想され、文化財の保存や分煙対策のためにも適切な喫煙所の整備が急務となりそうだ。